老後に歯を失う人、失わない人。「老後の後悔1位は『歯』」
老後に歯を失う人、失わない人
長寿社会の現代、何歳になっても大切なことは、「食事」です。食事を摂取できなくなったとき、人に限らずあらゆる動物は弱ってしまいます。
一方で、食事を楽しめる人は、何歳になっても元気で丈夫な傾向にあります。
今回は、歯が老後にもたらす価値と、歯を失ったときのリスク、その予防策と対応策についてお話します。
1 歯は老後になると抜ける?
1-1 日本人の平均的な残存歯の数
平均寿命が延び、現在では元気な80歳以降の方が多くいる世界になりましたが、歯はどうでしょう?
様々なデータを見る限り、日本人の歯の残存数は、80歳時点で「10本~15本」となっています。ただし、あくまでもこれは平均ですので、人によっては8本以下という方もおりますし、0本で総義歯という方もおります。
とはいえ、現在は政府の運動の効果もあり、人々の歯への意識は非常に高くなっています。その結果、有名なスローガンである「8020運動」も功を奏し、80歳で20歯の歯を保持している方が50%(参考:厚生労働省「健康増進法」)に達しています。
1-2 世界との比較
歯への関心度が高まり、日本人の歯の残存数が増えていることは非常に良いニュースですが、その一方で、まだまだ世界の先進国と比べると、その数は少ないのです。例えば、アメリカにおいては、その残存数は80歳で「15~20本」あり、スウェーデンでは「20~25本」残っています。その差の理由は後述します。
2 歯を失うと何が問題?
2-1 食事が自由にできなくなる
歯を失う場所により、その問題点は変わってきますが、奥歯を失った場合にもっともダイレクトに不便さを感じることが「食事」です。
私達が日常で当たり前に行っている「かみ切ったり」「食塊を小さくしたりする」などには、奥歯の存在が不可欠なためです。
2-2 会話がしづらくなる
歯を失う場所が前歯の場合、審美的な観点でも問題が生じますが、同時に発音がしづらくなります。
また、奥歯を失い、入れ歯を入れた場合は、それ自体が会話のしづらさを誘発する場合があります。
2-3 頭痛、肩こり、認知症などのリスク
歯を失ったとき、それを放置することにより「噛み合わせ」に変化が起こります。
その結果、歯と歯の当たり方が狂い、噛んだ時の痛みや、顎関節の痛みを誘発します。
その他、無意識のうちにそれらのバランスの変化が、頭痛や肩こりの原因につながることが分かっています。
また、歯を失う原因の多くが「歯周病」によりますが、歯周病の罹患者は、そうでない場合に比べて、アルツハイマー型認知症のリスクが1.7倍高まるというデータがあります。
これは、アルツハイマー型認知症の方の脳内の「PG菌」の量が、健常者よりも多いことからわかったことです。このPG菌こそ、歯周病なのです。
3 歯を長持ちさせるにはどうすればいい?
3-1 日々のプラークコントロールが大事
歯を失う原因の1位である「歯周病」も、2位の「虫歯」も、共に「菌」による感染で起こります。
これらを起さないことが、歯を健康的に保持するときに不可欠になります。
そのために大切なことは、それらの原因を引き起こす「プラーク(歯垢)」を徹底的に除去する習慣です。
このことをプラークコントロールと呼びます。
その防止法が「日々の歯磨き」です。その時に、歯ブラシだけではなく、デンタルフロスを用いる事が重要です。
デンタルフロスはなぜ必要?
歯周病菌は歯を失う原因の1位ですが、この菌の分布は「歯と歯の間」や「歯茎の内部」です。
これらを除去することは歯ブラシだけでは困難ですが、フロスを持ちることで、大分綺麗に除去することができます。
3-2 痛くなったら歯医者に行くという発想を捨てる
100%綺麗に磨けている(プラークコントロールできている)と思っていても、実際には歯の裏側や歯茎の内部に歯垢が溜まっています。
これらの「取り残した歯垢」は、時間とともに除去することができない硬さ(=歯石)になっていきます。
そのため、定期的に歯医者さんに行き、これらの歯垢と歯石を徹底的に除去する習慣が重要です。
従来あった概念である「痛くなったら歯医者に行く」という発想を捨て、「痛くなる前に歯医者に行く」「痛くならないように歯医者に行く」にマインドシフトすることが、歯を生涯健康に保つために大切です。
4 歯を失ったときの治療法は?
入れ歯
入れ歯治療は、失った歯を、その他の歯や粘膜で支えることにより補う治療の1つです。
取り外しが可能ですが、お口の中の違和感が有る点や、話しづらい点などの欠点の他、毎日の取り外しと清掃の習慣が必要になります。
シチュエーションによってはある程度許容な場合もありますが、硬いものを噛むことができない点が最大の欠点です。
ブリッジ
ブリッジ治療は、失った歯を補うために、他の歯を支えにして補う治療の1つです。
入れ歯との最大の違いは、よく噛める点です。これは取り外し式ではなく、固定式のためです。
また、会話のしにくさや、違和感なども減少します。
ただし、欠点として、入れ歯以上に、「歯に頼る」ことが必要なため、残っている歯を一定量削る必要性があります。
インプラント
インプラント治療は、失った歯を補うための治療の1つです。
この治療の最大の特徴は、支える力を「歯や粘膜」ではなく「骨」に頼ることです。
この方法は、普通の歯に最も近い形で歯を補うことができるため、噛むときの強度が最も強い点が利点となります。
ただし、欠点として、外科的な処置が必要になるため、治療には一定の出血があることと、一定の時間がかかります。
そのため、年齢や全身状態を考慮して選択をします。
5 老後の1番の後悔は「歯のケア」
80代の方へのインタビューにて「何が幸せですか?」を尋ねる番組がありました。
その時の回答は、一様に「食事」と「会話」と「旅行」でした。
食事に歯が必要なのはもちろんですが、会話にも重要です。
そして、旅行も旅先で食事をするのがセットですので、その意味で「歯の健康」は人生の豊かさに直結します。
実際に、雑誌プレジデントの調査によると、「老後の後悔の1位」に、健康編では「歯のケアをもっとしっかりしておけばよかった」とあります。
(上記の記事:定年後の後悔1位は「歯のケア」)
その歯を守るためには、何より毎日のブラッシング、フロスを用いたプラークコントロールと、定期的な歯科医院でのクリーニングが大切です。
仮に歯を失った場合でも「入れ歯」や「ブリッジ治療」「インプラント治療」がありますが、あくまでも一長一短があり、もともとある自然の歯に比べると、劣ります、
その観点からも、ぜひ健康な歯を保ち、治療をしなくてもいい環境を整えていきましょう。
神保町野本歯科医院 野本幸平
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