歯周組織再生療法の種類と違い|リグロス、エムドゲイン、GTR法どれが正解?
2026/02/28
神保町野本歯科医院の院長、野本です。
当院には、他院で「歯周病が進行しているので、抜いてインプラントにしましょう」と言われた患者さまがセカンドオピニオンで数多く来院されます。
もちろん、どうしても残せないケースはありますが、最新の「歯周組織再生療法」を適切に行えば、以前なら諦めていた歯を救える可能性が格段に上がっています。
歯を失うことは、単に食事がしにくくなるだけでなく、表情や認知機能にまで影響を及ぼします。
「自分の歯に勝るものはない」という信念のもと、私たちが日々取り組んでいる再生療法の世界を詳しく解説いたします。
なぜ一度溶けた骨は、普通には戻らないのか?
治療法の説明の前に、まず知っていただきたいのが「お口の中の癒着(ゆちゃく)のルール」です。
歯周病で歯を支える骨(歯槽骨)が溶けると、そこには「空き地」ができます。
体はこの空き地を埋めようとしますが、残念ながら「骨」が作られるスピードよりも、「歯肉(ぐき)」が伸びるスピードの方が圧倒的に速いのです。
そのまま放っておくと、骨が再生する前に歯肉が空き地に入り込んでしまい、骨が戻る場所がなくなってしまいます。
再生療法の目的は、この「歯肉の侵入をブロックし、骨や歯周組織が再生する時間と環境を確保すること」にあります。
3つの主要な再生療法の違いと特徴
「歯周病で骨が溶けている」といっても、その溶け方や深さは一人ひとり異なります。
再生療法は、「どの材料が優れているか」ではなく、「あなたの骨の欠損形態にどの材料が合っているか」で選ぶことが成功の鍵となります。
リグロス(成分:遺伝子組み換えヒトbFGF)
日本の製薬会社が開発した、世界初の「成長因子」による保険適用の再生材料です。
強力な「細胞増殖因子」の働きにより、骨を作る細胞(骨芽細胞)や血管を作る細胞を爆発的に増やします。
傷口の治りが非常に早く、血管が新しく作られるため、骨が再生するスピードが速いのが最大の特徴です。
具体的な特徴
保険適用
3割負担の場合、窓口での薬剤費負担が数千円程度と、非常に導入しやすい。
ゲルの性質
サラサラとしたジェルのため、複雑な形の骨のくぼみにも隅々まで行き渡ります。
デメリット
作用が強力な反面、歯肉が大きく退縮(下がる)している部位や、横に広く平らに溶けている部位には、薬剤が流れ出しやすく不向きな場合があります。
エムドゲイン(成分:エナメルマトリックスデリバティブ)
スウェーデンで開発され、世界中で20年以上の圧倒的な実績を誇る自費診療の材料です。
子どもの歯が生えてくるときに働くタンパク質を利用します。
単に骨を増やすだけでなく、歯の根と骨を繋ぐ「歯根膜(しこんまく)」というクッション組織を精密に再生させる能力に長けています。
具体的な特徴
安定性
ゲルに粘り気があり、塗った場所に留まりやすい。
術後の美しさ
歯肉が下がりにくく、前歯などの見た目(審美性)が重要な部位に向いています。
デメリット
自費診療となるため、数万円〜の費用がかかります。
また、豚の歯胚(しはい)から抽出した成分であるため、極めて稀にアレルギー反応を気にする方がいらっしゃいます。
GTR法(誘導組織再生法)
薬剤を使わず、「膜(メンブレン)」という物理的なバリアを使用する伝統的な手法です。
骨が溶けたスペースに特殊な膜を張り、骨より成長が早い「歯肉(ぐき)」が入り込まないように遮断します。
その空いたスペースで、自分の体が本来持っている再生力を最大限に引き出します。
具体的な特徴
骨の形の維持
膜がテントのような役割を果たし、骨のボリューム(厚み)を出したい時に有効です。
デメリット
手術が非常に高度で、膜が露出すると感染のリスクが高まります。
現在では単独で行うよりも、リグロスやエムドゲインと併用するのが一般的です。
どの治療法が自分の症例に適しているか?
「あなたの骨の溶け方」に基づいた、選択の目安です。
| 症例のタイプ | 推奨される治療法 | 理由 |
|---|---|---|
【狭くて深い】 |
リグロス |
薬剤がくぼみに留まりやすく、保険で高い効果が得られます。 |
【前歯など見た目が重要】 |
エムドゲイン |
術後の歯ぐきの治りが美しく、退縮(下がる)リスクを抑えられます。 |
【骨の厚みが欲しい】 |
GTR法(+骨補填材) |
物理的な「壁」を作ることで、骨のボリュームを出しやすくなります。 |
【広範囲の欠損】 |
エムドゲイン + GTR |
薬剤の接着力と、膜による遮断を組み合わせた最強の布陣が必要です。 |
再生療法を成功させるための「4つの条件」
再生療法を成功させる(=実際に骨を再生させ、歯として機能させる)ためには、以下の条件が高いレベルで揃う必要があります。
徹底的な「細菌の完全除去」
再生材料(リグロスやエムドゲインなど)は、細胞を呼び寄せる素晴らしい力を持っていますが、もしそこに細菌が1つでも残っていれば、材料は「細菌の栄養源」にさえなり得ます。
当院では、肉眼では見えない歯の根の奥深くにある歯石や汚染組織を、拡大鏡やマイクロスコープ下で徹底的に除去します。
この「術野の清浄度」が成功率を左右する最大の要因です。
歯肉の「精密な縫合技術」
再生療法は、骨が溶けたスペースを「クリーンルーム」のように密閉し、数ヶ月かけて骨が育つのを待つ治療です。
術後に歯ぐきがわずかでも開いてしまうと、そこから細菌が侵入し、再生は失敗します。
当院では髪の毛よりも細い極細の糸を使用し、拡大視野下で、歯と歯ぐきをコンマ数ミリの精度で縫い合わせます。
動揺(ぐらつき)のコントロール
再生しようとしている最中の骨は、まだ柔らかい状態です。
その歯が噛み合わせでグラグラ動いていると、新しく作られようとしている組織が壊されてしまいます。
術前・術後には、必要に応じて隣の歯と連結して固定し、安静な環境を保つことで、組織がじっくりと根付く時間を確保します。(暫間固定)
全身状態と生活習慣(特に禁煙)
体そのものに「治る力」がなければ再生は起きません。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、再生に不可欠な血液の供給をストップさせます。
喫煙者の再生療法成功率は、非喫煙者に比べて著しく低いというデータがあり、当院では治療期間中の禁煙を強くお願いしています。
また、血糖値が高い状態は、免疫力を低下させ、感染リスクを激増させるため、糖尿病のコントロールも必須となります。
日本を代表する権威、伊藤公一先生の監修による歯周病治療
当院の歯周病治療および再生療法のプログラムは、元日本歯周病学会理事長・伊藤公一先生の監修を受けています。
伊藤先生は、日本の歯周病学の礎を築き、長年にわたり予防と治療の最前線で研究・指導を行ってこられた、まさに「歯周病治療の神様」とも呼べる存在です。
エビデンスに基づいた治療
「なんとなく治りそう」といった勘に頼るのではなく、最新の科学的根拠(エビデンス)に基づいた診断と術式を採用しています。
予防から再生へ
そもそも再生療法が必要になる前に食い止める「予防」の徹底。
そして、どうしても再生が必要になった際に行う「高度な術式」。
この一連の流れが、権威ある知見によって支えられています。
院長からのメッセージ
「歯を抜くしかない」と言われたとき、多くの患者さまが目の前が真っ暗になるような思いをされます。
しかし、最高レベルの監修と、マイクロスコープによる精密な技術、そして患者さまの協力があれば、その歯は救える可能性があります。
私たちは、伊藤公一先生から受け継いだ「歯を徹底的に守る」というフィロソフィーを大切にし、あなたの10年後の笑顔のために、一切の妥協を排した再生療法を提供いたします。
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