「最近、硬いものが食べられなくなった」 その理由と対策
硬いものが食べられなくなった理由と対策
1 60代から増える「硬いものが食べられない」
食生活は、日々のQOLにおいて非常に大切なものです。
そこで重要になってくるものが「噛む力」と「飲み込む力」です。
今回のテーマは「噛む力」ですが、実は「飲み込む力」も同じくらい大切です。
歯科医院で水を出して歯の洗浄をする時に、「むせやすい人」と「むせにくい人」に分かれます。
むせるとは、お口にたまった水が「気管」に入りそうになった時に「咳き込む現象」です。
これは「噛む力」ではなく、「飲み込み力」が弱まっていることに起因します。
80代の方でも、まったくむせない方もいれば、60代の方でも、むせやすい方がいます。
同様に、加齢に伴い「噛む力」にも差が生じていきます。
2 硬いものが食べられないことの問題点
「最近、硬いものが食べられず、前歯でなんとか噛むようにしている」
「硬いものを噛めない。噛むと違和感があるため、食べるのを避けている」
このような声は、しばしば聞こえてきます。
その大きな原因の1つが「噛むときの痛み」「噛む時の嫌な感じ」です。
人は「噛んだ時に痛い」という経験をすると、どうしても「柔らかいものを食べよう」という気持ちに変わっていきます。あるいは、右で噛むと痛い時には、左で噛むことが習慣化します。
その結果、左の歯の負担(ダメージ)が増えてしまい、左で噛むときにも痛みを感じていきます。
このようなプロセスを経て、「左右の奥歯で噛むことができない」という結果につながります。
人に限らず、噛むことができない場合には、栄養摂取が難しくなります。これは高齢者になると増えてくる「フレイル」(虚弱)につながっていく最初のステップと言われています。
また、噛む時に使う「咬筋」が衰えていきます。その結果、ますます噛むことができないという悪循環に入り、頬がこけ、体重が減り、弱くなっていきます。この「噛む」ということや、「食いしばる」ということは、スポーツをする時や、なにか力を発揮するときには、とても大事な源になります。
したがって、生命力という観点からも、噛むことができないことのリスクは高まっていきます。
3 なぜ硬いものが食べられなくなるのか?
硬いものを食べることができなくなる理由の最大のものは、「歯周病」です。
歯周病というのは、「歯の周りの病」です。
したがって、歯自体は健康であっても、歯の周りの組織(=歯を支えている骨、歯を覆う歯茎)に炎症を起こし、歯がグラグラし、歯を支えることができない状態となります。
その結果、噛む時の違和感や痛みを感じ、硬いものを控えるようになっていきます。
4 歯周病をいかにして防ぐか
歯周病により、一度溶けてしまった「骨」(=歯がグラグラする理由)は、現代医療では元に戻すことができません。
再生療法を用いても、元に戻せる骨は多くなく、あくまでも限られた場合にのみ適用できるのが現状です。
したがって、歯周病で大事なことは「治療をする事」ではなく「いかに予防するか」となります。これは年齢に関わらず、この重要性を気づいた人から「早速始める」ということが大切です。
歯周病予防の最大のポイントは、「毎日の歯のケア」と「定期健診」です。
毎日の歯磨きにより、虫歯を予防することができるのと同様に、毎日の「フロス」と「歯磨き」を行うことで、歯周病を予防することができます。
ただし、フロスに加えて、「歯周病予防のための歯磨き」をすることが不可欠となります。
虫歯と異なり、歯周病の原因菌は「歯茎」の内部に潜んでいるため、歯磨きの毛先を「歯面に対して斜め」に向けてブラッシングをすることが重要です。
そして、磨き残しの多い所を意識的に磨くことが大変重要になります。
定期的な健診とクリーニングで、磨き残しも綺麗にする
歯のケアはどうしてもご自宅ケアだけでは不十分です。定期的に「歯垢が硬くなった歯石」や「磨き残し部分」を歯科医院で除去することが大切です。
欧米諸国をはじめとする先進国においては、この歯周病のケアを非常に若いころから重視しており、美容院に行くような頻度で、歯科医院で歯のクリーニングと健診を受けることが日常になっています。
その結果、何歳になっても、歯の残存数を保つことができます。
実際に、歯の健診と残存歯の数は比例するデータがでています。
5 まとめ
生涯にわたり、ご自身の歯で食事を楽しむこと。
これこそが、すべての歯科医師の願いであり、すべての人が望むことだと思います。
それを実現させるためには、早い段階からの意識とケアが大切です。
毎日の歯のケアを欠かさずに行い、定期的に歯科医院に行くことこそが、健全な歯を保つために大切です。
神保町野本歯科医院 野本幸平
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