誤嚥性肺炎と歯の関係。歯周病が誤嚥性肺炎につながる。
2025/07/03
誤嚥性肺炎と歯周病のつながり
近年、報道番組などでも知られるようになった「誤嚥性肺炎」ですが、肺炎は、日本人の死因の第5位(『人口動態統計2020年』厚生労働省)です。この肺炎のうちで、70%以上を占めているのが、「誤嚥性肺炎」です。
AIによる次のように定義されます。
・誤嚥性肺炎は、口の中の細菌が誤って気管や肺に入ることで引き起こされる肺炎です。
・特に歯周病菌は誤嚥性肺炎の原因菌として重要で、口腔内の清潔を保つことが予防に不可欠です。
このように、誤嚥性肺炎の最大の原因は「口の中の細菌」なのです。
今回はこの点についてお伝えします。
1 誤嚥性肺炎はなぜ起こる?
誤嚥性肺炎は、口の中にある細菌などが、飲み込むときに誤って気管に入った場合に「肺に感染」を起すことで生じる疾患です。
特に食事中のむせや、唾液が飲み込めない等の症状がある場合には、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎の3大原因
口腔内の微生物の増加
●唾液分泌の減少
●口腔ケアの不足⇒虫歯、歯周病
オーラルフレイル(口腔機能の低下)
●脳梗塞の後遺症による反射の低下
●噛む機能の低下、飲み込む機能の低下
免疫力の低下
●高齢(加齢)
●低栄養
●糖尿病 など
プラークコントロールの徹底こそが重要
誤嚥性肺炎の原因菌の多くが「歯周病の原因菌」です。この菌を防止するためには、歯に付着する「歯垢(プラーク)」をしっかりと除去し、徹底したプラークコントロール(歯垢の少ないお口の管理)が大切です。
そのためには、日ごろのご自宅でのお口のケア(セルフケア)と、歯科医院での定期的なクリーニング(歯磨きではとれない*歯石の除去)を受けることが大切です。
*歯石:歯垢は48時間で石灰化し、歯ブラシでは除去できない状態になります。これを歯石と呼びます。
歯周病の予防には必ず「フロス」を用いる
歯周病菌は酸素のないところで生きる嫌気性菌です。その多くは、歯茎の中とその周辺を好みます。
これらをしっかりと取り除くためには、歯ブラシの毛先を歯に対して45度に向けて「ゴシゴシ」ではなく、「マッサージ」のように優しく振動を与えることが大切です。
しかし、それでも歯ブラシだけでは歯周病菌を取り除くことは難しいため、必ずフロスを用いる事が大切です。
2 誤嚥性肺炎と口の管理のつながり
(東京都立心身障害者口腔保健センター)
口の内容物を誤嚥したときに、そのすべての菌が「誤嚥性肺炎」に結びついているのではなく、ある特定の菌が、特に誤嚥性肺炎を引き起こすことが分かっています。それが「歯周病菌」です。
つまり、誤嚥性肺炎から見つかる細菌の多くが、 歯周病の原因細菌なのです。
3 高齢者ほど誤嚥性肺炎に注意
高齢者の方は、唾液の分泌量が徐々に減ってくる傾向にあるため、お口の中に細菌が増えてしまう環境にあります。また、むせることや、食物をかみ砕く(咀嚼)能力も低下してくる傾向にあるため、この両者のリスクが増すことで、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
4 誤嚥を防ぐベロの力
「ガギグゲゴ」訓練がベロを鍛える
誤嚥をする方の多くは、ベロで食物を咽頭部に送る力が衰える傾向にあります。これは誰でも衰えてくるため、意識的に「ガギグゲゴ」「ガギグゲゴ」「ガギグゲゴ」と発音することを推奨します。この発音を訓練することで、咽頭部に食物を送るベロの力を鍛えることができます。1日1分、この訓練をすることが大切です。
5 まとめ
被災地などで一時的に避難している場合に、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。被災地では、お口の管理がおろそかになり、お口の中の衛生環境が悪くなる傾向にあるためです。その他、長期に入院されている方の場合も、お口の管理が疎かになりやすい傾向にあり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
あらゆる病気は、口からはじまります。口を健康的に管理できている方は、噛む力も強く、いつまでも元気な方が多いです。超高齢者社会で、長寿国だからこそ、お口の管理の重要性をより増しています。
ぜひ一度、お近くの歯科医院で受診され、お口の現在の状態をチェックしてもらうことを強く推奨します。そして、ご自宅での正しいお口の管理を徹底していきましょう。
神保町野本歯科医院 野本幸平
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