痛くないむし歯でも治療は必要?歯医者に行かなくてもよいケースとは
2025/09/12

「虫歯って、痛いものだと思っていました。」
「全然痛みがないのに、歯医者さんに行ったら『虫歯がありますね』と言われてびっくりしました。」
「一度痛かった歯が、いつの間にか痛くなくなって、治ったのかと安心していました…」
当院の患者さまから、このようなお声をいただくことは決して少なくありません。
多くの方が、「歯が痛い=虫歯」という認識をお持ちですが、実は痛みがない虫歯の方が多いというのが実情です。
この記事では、なぜ虫歯なのに痛みが出ないのか、痛みが出てから歯科医院に行くことのデメリット、痛くないむし歯で治療が不要なケースについて解説させていただきます。
痛くない虫歯のケース:なぜ虫歯なのに痛みが出ないのか?
「虫歯=痛い」というイメージが強いですが、実は虫歯が進行する過程で、痛みを感じる時期はごく限られています。
ケース①:ごく初期の虫歯(C1)

歯の表面(エナメル質)だけが溶け始めている段階。
歯の溝が少し黒ずんだり、歯と歯の間が白っぽくなったりします。
この段階の虫歯は、歯科医師の目で見ても非常に見つけにくいことがあります。
しかし、フッ素塗布や丁寧なブラッシングで進行を食い止め、削らずに済む可能性があります。
早期発見・早期治療が何よりも重要な段階です。
痛みが出ない理由
歯の一番外側にあるエナメル質には、神経がありません。
このため、虫歯がエナメル質にとどまっている限り、冷たいものや熱いものがしみたり、痛みを感じたりすることはほとんどありません。
ケース②:象牙質に達した虫歯(C2)

虫歯がエナメル質を越えて、その内側の象牙質にまで達した段階。
痛みがないからといって放置すると、虫歯は確実に進行していきます。
この段階で治療を行えば、詰め物をすることで歯の機能を取り戻すことができます。
痛みが出ない理由
象牙質には、神経につながる小さな管(象牙細管)がたくさん通っています。
通常、この段階になると冷たいものがしみることが多いのですが、虫歯の進行が非常にゆっくりな場合や、象牙質が硬い方、虫歯が歯と歯の間など気づきにくい場所にできている場合は、痛みを感じないことがあります。
ケース③:痛みがあったのに、いつの間にか痛みが消えた虫歯(C3〜C4)

虫歯が歯の神経(歯髄)まで到達し、神経が細菌感染を起こして炎症(歯髄炎)を起こした段階。
そして、最終的に神経が壊死してしまった状態。
痛みが消えたことで「治った!」と勘違いされる方が多いのですが、これは最も危険なサインです。
神経が死んでしまうと、虫歯菌は歯の根の先にまで到達し、膿の袋(根尖性歯周炎)を作ることがあります。
この状態は、歯の内部で深刻な感染が進行しており、放置すると歯の保存が難しくなるだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
痛みが出ない理由
神経が生きている間は、ズキズキとした激しい痛みや、何もしていなくても痛むといった症状が出ます。
しかし、細菌によって神経が完全に死んでしまうと、痛みの信号を送る機能が失われるため、痛みがピタリと止まります。
ケース④:過去に治療済みの歯の虫歯(二次う蝕)

過去に詰め物や被せ物をした歯の下で、再び虫歯が進行している状態。
詰め物や被せ物と歯の間にできたわずかな隙間から細菌が侵入し、内部で静かに虫歯が進行ています。
歯の内部の象牙質や神経が広範囲に侵されてしまい、詰め物では対応できず、抜歯に至るケースもあります。
痛みが出ない理由
既に神経を取っている歯は痛みを感じません。
また、外から見えないため気づきにくく、気づいたときには手遅れになっていることが少なくありません。
痛みが出てから歯科医院に行くことのデメリット
「痛くなってから歯医者に行けばいいや」
そう考えている方は、以下のような大きなリスクを背負っていることを知っておいてください。
デメリット①:治療期間が長引き、費用も高くなる

痛くない初期の虫歯(C1、C2)であれば、一日で治療が完了し、治療費も安く済みます。
しかし、痛みが伴う重度の虫歯(C3)や、神経が死んでしまった虫歯(C4)になると、歯の根の治療(根管治療)が必要になります。
根管治療とは?
歯の神経が入っている根っこの管を掃除し、細菌を取り除く治療です。
細菌を完全に除去するためには、何度も通院が必要となり、治療期間は数週間から数ヶ月に及ぶこともあります。
治療が複雑になるため、費用も高額になりがちです。
痛みがないうちに治療を済ませておけば、時間もお金も、そして心身への負担も、最小限に抑えることができるのです。
デメリット②:痛みが強いと、麻酔が効きにくくなる

虫歯が進行して歯の神経が激しく炎症を起こしている状態(歯髄炎)では、麻酔が効きにくいことが多いです。
根管治療とは?
炎症が強い場所は、血行が良くなり、麻酔薬がすぐに洗い流されてしまうため。
炎症によって組織が酸性に傾き、麻酔薬が本来の作用を発揮しにくくなるため。
痛みがあるからと慌てて来院されても、炎症が強すぎて麻酔が効かず、治療中に痛みを伴ってしまうケースが少なくありません。
痛みを伴う治療は、患者さまに大きなストレスを与え、歯科恐怖症をさらに悪化させてしまうことにもつながります。
デメリット③:最悪の場合、歯を失う可能性がある

「痛みがある=神経が生きている」というわけではありません。
前述したように、痛みがなくなった虫歯は、神経が死んでいることが多く、感染は歯の根の先にまで広がっている可能性があります。
この状態を放置すると、歯の根の周りの骨が溶けてしまい、歯がグラグラになって抜歯せざるを得なくなります。
歯を失ってしまえば、ブリッジやインプラント、入れ歯といった大掛かりな治療が必要となり、天然の歯に勝るものはありません。
デメリット④:隣接する歯や顎の骨にも悪影響を及ぼす

虫歯が歯の根にまで達し、細菌が歯根の先に溜まると、その炎症は隣接する健康な歯や顎の骨にも広がることがあります。
隣の歯への影響
歯根の膿が隣の歯の歯根を溶かしたり、隣の歯の神経まで感染させたりすることがあります。
顎の骨への影響
骨が溶けてしまうだけでなく、炎症が広がると、歯茎や頬が腫れて、強い痛みを伴う顎骨炎を引き起こすこともあります。
デメリット⑤:体の健康にも悪影響を及ぼす可能性がある

虫歯菌や歯周病菌は、歯の内部や歯茎の血管を通じて、全身に広がることがわかっています。
「たかが虫歯」と安易に考えていると、取り返しのつかない事態を招くことになりかねません。
歯性病巣感染
歯の根の先に溜まった膿(細菌の塊)が、全身の他の部位に飛んでいき、心臓病、腎臓病、糖尿病などの全身疾患に悪影響を及ぼすことがあります。
糖尿病
歯周病菌が血糖値を下げるインスリンの働きを妨げるため、糖尿病を悪化させることがあります。
「痛くないから大丈夫」と放置するのは危険です
では、痛くない虫歯で、歯医者に行かなくてもよいケースはあるのでしょうか?
「痛くない虫歯だから歯医者に行かなくてもよい」というケースは、ほとんどないと、はっきりお伝えします。
ごく初期の虫歯(C0、C1)であれば、削らずに経過観察となることはあります。
この場合は、削るなどの治療は不要ですが「歯医者に行かなくてもよい」という意味ではありません。
歯科医師が正確に診断した上で、定期的なクリーニングやフッ素塗布を行い、進行していないか継続してチェックしていく必要があるからです。
痛みがないからと放置しているうちに、虫歯が神経にまで達し、麻酔が効きにくくなったり、治療期間が長引いたり、最悪の場合、歯を失うことにもつながりかねません。
神保町野本歯科医院の「痛くない虫歯」治療アプローチ

痛みに配慮した治療
治療の痛みが怖い方のために、麻酔注射の痛みを抑える工夫(表面麻酔の使用や、電動麻酔器の使用)を徹底しています。
治療中も、患者さまの様子を常に確認し、痛みがないか、不安なことがないか、こまめに声をかけることを心がけています。
精密な診断と丁寧な説明
痛みがない虫歯は、肉眼では見つけにくいことがあります。
当院では、レントゲンや口腔内カメラを用いて、患者さまご自身にお口の状態を客観的に見ていただき、分かりやすく説明します。
今後どのような治療が必要か、治療にかかる期間や費用についても、複数の選択肢をご提示し、患者さまが納得できるまで丁寧に説明します。
予防に重点を置いた診療
虫歯や歯周病の根本的な原因は、毎日のブラッシング習慣にあります。
当院では、歯科医師による専門的なクリーニングや、ブラッシング指導を通じて、患者さまご自身が虫歯にならないための正しい知識とスキルを身につけられるようサポートします。
まとめ:「痛くない」は、歯が発している最後の警告かもしれません

「痛くない虫歯」は、多くの場合、静かに、そして確実に進行しています。
痛みという「サイン」が出ないからといって、病気が存在しないわけではありません。
特に、一度痛みが消えた虫歯は、神経が死んでしまっている可能性が高く、放置すれば、歯を失うことにつながる最も危険な状態です。
歯は、一度削ったり、抜いたりしてしまうと、二度と元には戻りません。
ご自身の歯を一生使い続けるためには、「痛みがない」という状態を過信せず、定期的に歯科医院を受診することが何よりも重要です。
神保町野本歯科医院は、患者さまが安心して治療を受けられるよう、全力でサポートいたします。
「痛くないから大丈夫」と放置せずに、まずは一度、ご相談にいらしてください。
神保町野本歯科医院:https://nomodent5454.com/
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