歯ぐきにも口内炎ができる?唇にできる口内炎との違いと、間違いやすい「要注意」な症状
2026/01/10
神保町野本歯科医院の院長、野本です。
「歯ぐきに白いポチッとしたものができて、痛む……これって口内炎?」
「唇にできる口内炎とは少し様子が違う気がするけれど、放置して大丈夫?」
多くの方は、口内炎といえば「唇の裏」や「頬の内側」などの柔らかい粘膜にできるものを想像されるでしょう。
しかし、実は歯ぐき(歯肉)にも口内炎はできます。 ただし、歯ぐきにできる「できもの」や「痛み」は、一般的な口内炎(アフタ性口内炎)だけでなく、歯の根っこの感染や重篤な病気のサインであることも少なくありません。
この記事では、歯ぐきの口内炎の正体、唇にできるものとの構造的な違い、そして「口内炎と間違いやすい危険な症状」について解説します。
歯ぐきの口内炎はなぜ「唇」と違うのか?(構造と種類の違い)
まず知っておいていただきたいのは、お口の中の粘膜は場所によって「性質」が異なるということです。
これが原因で、口内炎の現れ方も変わってきます。
「角化粘膜(かくかねんまく)」という特徴
唇の裏や頬の内側は、食べ物や会話で動く必要があるため、非常に柔らかく伸び縮みする粘膜(遊離粘膜)で覆われています。
一方で、歯ぐきや上あご(口蓋)は、食べ物を噛む際の摩擦に耐えるため、皮膚のように硬い層を持つ「角化粘膜」になっています。
唇の口内炎
境界がはっきりした、丸くて白い「くぼみ」ができやすい。
歯ぐきの口内炎
硬い組織の上にあるため、くぼみというよりは「表面の荒れ」や「小さな水ぶくれ」のように見えることがあります。
歯ぐきにできる口内炎の主な種類
「歯ぐきの口内炎」と一口に言っても、実はその背景にはさまざまな原因があります。
ご自身の症状がどれに近いかを確認し、適切な対処を知るためのヒントにしてください。
アフタ性口内炎(一般的な口内炎)
最も頻度が高いタイプですが、実は「硬い歯ぐき(付着歯肉)」にできることは比較的少なく、歯ぐきと唇の境目あたりの「柔らかい粘膜」によく見られます。
中央が白くくぼみ、周りが赤く縁取られた、直径数ミリ程度の円形・楕円形の潰瘍です。強いしみる痛み(接触痛)があります。
ストレス、睡眠不足、ビタミン不足(B2、B6、Cなど)、免疫力の低下、または生理前などのホルモンバランスの乱れが主な原因とされています。
通常は1週間〜10日程度で自然に治ります。
外傷性口内炎(物理的刺激によるもの)
歯ぐきは食べ物や歯ブラシが直接当たる場所であるため、傷が原因で口内炎になるケースが非常に多いです。
傷ついた部分が白っぽく変化したり、赤く腫れたりします。アフタ性ほど境界がはっきりしないこともあります。
外傷性口内炎の原因としては、
強い力で磨きすぎて歯ぐきを傷つけた(フェスツーン)。
魚の骨、硬いお煎餅、熱すぎる食べ物による火傷。
合わない入れ歯や矯正装置、あるいは尖った被せ物(銀歯の段差など)が常に当たっている。
等が考えられます。
原因(刺激物)を取り除けば数日で改善しますが、放置すると細菌感染を起こし悪化します。
ウイルス性口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎など)
単純ヘルペスウイルスなどの感染によって起こります。特に「歯ぐき」が真っ赤に腫れるのが特徴です。
小さな水ぶくれ(水疱)が密集して多数でき、それが破れて小さな潰瘍(穴)になります。
歯ぐき全体が赤く腫れ、激しい痛みを伴います。
高熱や全身の倦怠感、顎の下のリンパ節の腫れを伴うことが多いです。
主な原因は、ヘルペスウイルスなどの初感染、あるいは免疫低下による再発によるもので、非常に感染力が強いため、タオルや食器の共有を避け、早急に歯科や皮膚科で抗ウイルス薬の処方を受ける必要があります。
口腔カンジダ症(カビによるもの)
お口の中に常に存在する「カンジダ」というカビ(真菌)が、異常に増殖することで起こります。
歯ぐきや上あごに、白い苔(こけ)のような膜が付着します。
この白い膜をガーゼなどで拭うと剥がれますが、剥がした跡が赤く腫れてヒリヒリ痛むのが特徴です。
免疫力の低下、長期間の抗菌薬(抗生物質)の使用、ドライマウス、あるいは入れ歯の清掃不良が原因として挙げられます。
抗菌薬では治らず、専用の「抗真菌薬」による治療が必要です。
壊死性潰瘍性歯肉炎(えしせいかいようせいしにくえん)
これは一般的な口内炎よりも深刻な状態で、歯ぐきの病気(歯周病の急激な悪化)に近いものです。
歯と歯の間の三角形の歯ぐき(歯間乳頭)が、「パンチで抜かれたように」平らに凹み、表面が灰白色の膜(偽膜)で覆われます。
耐え難い激痛と、独特の強い口臭を伴います。
極度の疲労、ストレス、栄養不良、喫煙、重度の口腔清掃不良などが重なった時に起こります。
放置すると歯を支える骨まで破壊が進むため、歯科医院での緊急的な処置が必須です。
症状別・見分け方のまとめテーブル
| 種類 | 主な見た目 | 痛み | 治癒期間の目安 |
|---|---|---|---|
アフタ性 |
白いクレーター状(1〜2個) |
強い(しみる) |
1〜2週間 |
外傷性 |
傷跡、または不規則な白い荒れ |
接触時に痛む |
3日〜1週間 |
ヘルペス性 |
小さな水ぶくれが密集、全体が赤い |
激痛(発熱も) |
1〜2週間(要投薬) |
カンジダ症 |
白い膜(拭き取れる) |
ヒリヒリする |
治療をしないと続く |
壊死性 |
歯ぐきの角が削れたような凹み |
激痛(口臭あり) |
歯科治療が必須 |
唇の口内炎と間違いやすい「歯ぐき特有」の症状
ここからが非常に重要なポイントです。
歯ぐきに「白くて痛いもの」ができたとき、それが口内炎ではなく、歯の内部の病気であるケースが多々あります。
フィステル(瘻孔:ろうこう)
「歯ぐきに白いニキビのようなものができた」という場合、その多くは口内炎ではなくフィステルです。
歯の根っこの先(根尖)に細菌が溜まり、膿が骨を溶かして歯ぐきの表面に出てきた出口です。
見分け方
痛みがない、あるいは「ズーン」とした重い痛み。
押すと膿が出る。
口内炎は数日で治るが、フィステルは治ってもすぐ再発する。
リスク
放置すると、顎の骨を溶かし続け、最終的には抜歯が必要になります。
智歯周囲炎(ちししゅういえん)
奥歯の歯ぐきが口内炎のように腫れて痛む場合、親知らずの周りの炎症かもしれません。
親知らずの隙間に汚れが溜まり、細菌感染を起こしたものです。
見分け方
歯ぐき全体が赤く腫れ上がり、噛むと痛い。喉の痛みや、口が開きにくくなることもあります。
エプーリス(歯肉腫)
歯ぐきがポコッと盛り上がってくる状態です。
歯石などの刺激やホルモンバランスの変化が原因で起こります。
見分け方
口内炎のように「しみる」のではなく、弾力のある塊として存在します。
良性の腫瘍ですが、切除が必要になることもあります。
【要注意】口内炎と間違いやすい「重篤な疾患」
「ただの口内炎だと思っていたら、実は怖い病気だった」というケースは歯科医院では珍しくありません。
特に以下の症状には最大限の警戒が必要です。
白板症(はくばんしょう):癌化の可能性がある白い膜
歯ぐきが白くなり、擦っても取れない場合。
痛みはないことが多いですが、「癌前駆症(がんになる手前の状態)」とされています。
見分け方
2週間以上経っても消えず、範囲が広がったり、表面がザラザラしたりしてくる。
口腔癌(こうくうがん):歯ぐきのガン
歯ぐきにできる癌は、一見すると大きな口内炎や、歯周病の腫れに似ています。
境界が不明瞭で、盛り上がっていたり、逆に大きく崩れていたりします。
見分け方
「2週間以上治らない」「出血しやすい」「触ると硬い」「しこりがある」。
これらに当てはまる場合は、直ちに専門医の受診が必要です。
天疱瘡(てんぽうそう)・類天疱瘡
免疫の異常により、お口全体の粘膜が剥がれやすくなる全身性の病気です。
歯ぐきが真っ赤になり、皮がめくれるように痛みます。
「歯ブラシが当たるだけで激痛」という場合は、ただの口内炎ではない可能性があります。
歯ぐきの痛み・できものへの対処法と治療
歯ぐきに違和感がある際、ご家庭でできることと、歯科医院で行う専門的な処置について解説します。
ご家庭での応急処置
清潔を保つ
痛む部分は刺激の少ないうがい薬(ノンアルコールのもの)や、ぬるま湯で優しくゆすぎ、細菌を減らします。
刺激を避ける
辛いもの、酸っぱいもの、熱すぎるものは炎症を悪化させます。
休養と栄養
アフタ性口内炎であれば、ビタミンB群の摂取と睡眠が効果的です。
歯科医院での専門治療
殺菌・軟膏処置
ステロイド系の軟膏や、殺菌剤を塗布します。
根管治療
原因がフィステル(根の先の膿)であった場合、歯の内部を徹底的に清掃・消毒して原因を断ちます。
歯科医師からのアドバイス:いつ受診すべき?
「たかが口内炎で歯医者に行くのは大げさかな?」と躊躇される必要はありません。
すこしでも「怪しいな」と感じたら、早急にご相談ください。
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