歯周治療・予防の方針について(当院では、国が定めている保険医療機関の方針に沿って対応をしています)

歯を失うと、「これまでの常識」が一変します。「食事の味がまずい」「上手く話せない」「口の中で違和感がある」「頬、舌を噛みやすい」・・・。

歯の喪失は、「日々の生活の質」(QOL)を著しく引き下げます。

歯を失う原因ナンバー1は「歯周病」

歯周病は文字通り「歯の周りの病」であり、厳密に言えば、「歯を支えている組織が壊れていく病」です。

この「歯を支えている組織」の代表こそが『歯槽骨』です。ポイントは一度吸収された歯槽骨(骨が溶けること)は、元には戻らないという点です。

その上、虫歯は初期段階から痛みがあるため、気づくことができますが、歯周病は、『痛みなく進行し、どんどん骨が溶け続け、痛みが出た時は、歯を抜く以外に選択肢がない状況』にあることです。

さらに、虫歯は1本だけで進んでいきますが、歯周病は『同時に複数の歯で生じる』ため、同時期に一気に歯が失われることになります。結果的に、ある年を境にどんどん抜け落ち、入れ歯(義歯)に移行せざるを得なくなるケースがほとんどです。

残念なことは、日本人の多くが、入れ歯になってから(歯が抜け落ちてから)、歯科医院に通われるようになります。本来、歯科医院へ来る意味は、諸外国同様に、歯を失わないように予防することであるべきです。

歯から始まる全身の病

平均寿命が延びている昨今、歯の健康格差は、残酷なほどに開いていくことは間違いありません。近年は、歯の不健康が全身に様々な悪影響を及ぼすことが分かってきています。糖尿病患者さんは、医師より「歯科医院の受診」を勧められるほど、糖尿病の悪化と歯周病の悪化は相互に関連しています。その他、「アルツハイマー型認知症」「誤嚥性肺炎」「心筋梗塞」「低体重出産」など、多くの病の進行に、歯周病菌が関わっていることが判明しています。

歯周病ケアは、『気づいたときから始める』ことが大切です。

ぜひ、「日々の歯ブラシ」と、「歯科医院によるケア」の二人三脚で、一緒に歯を守りましょう。

歯周病治療のルール

初めに、歯周病の原因である「不潔な口腔内」を徹底的にきれいにする(専門用語でプラークコントロールをする)ために、およそ2回~4回に分けて、部位別に歯に付着している『歯垢(細菌叢)』『歯石(歯垢が石灰化したもの)』を徹底的に除去します。このプロセスを経ないで、その他の治療をした場合、確実にその予後は悪くなります。

その上で、その他の「問題点(虫歯、嚙み合わせ異常、歯茎の腫れなど)」に対して対応をしていきます。問題点がない場合には、スパンを開けて、定期的な歯のクリーニングに入っていきます。この流れを次にまとめます。