神保町野本歯科医院

神保町駅徒歩1分の歯医者、神保町野本歯科医院です。

近年、電動歯ブラシの進化は目覚ましく、多くの方が日々のオーラルケアに取り入れています。
当院の患者さまからも、

「電動歯ブラシに変えた方がいいですか？」
「歯周病でも電動歯ブラシを使って大丈夫ですか？」

といったご質問を頻繁にいただきます。

電動歯ブラシは、正しく使えば手磨きよりも効率的に歯垢（プラーク）を除去できる非常に強力なツールです。
しかし、使い方を誤ると、かえって歯ぐきを傷つけたり、歯周病を悪化させたりするリスクがあることも事実です。
この記事では、電動歯ブラシが持つメリット・デメリットを解説し、あなたの口腔内の状態に合わせて「電動歯ブラシが向いている人」と「向いていない人」を具体的に診断します。

電動歯ブラシのメリットとデメリット

電動歯ブラシは、その高速な振動や回転によって、手磨きでは再現できないレベルの清掃効果を発揮しますが、それゆえに注意が必要です。

電動歯ブラシのメリット

圧倒的な清掃効率
手磨きと比較して、圧倒的に高速で微細な振動を行うため、短時間で効率よく歯垢を除去できます。
特に、歯の表面のプラーク除去能力は非常に高いです。

力のコントロールが容易
多くの電動歯ブラシには、歯に過剰な圧力がかかると自動で停止したり、ランプで知らせたりする「過圧防止機能」が搭載されています。
これにより、力を入れすぎる癖がある人でも歯ぐきを傷つけにくいです。

時間管理が可能
タイマー機能が搭載されているものが多く、歯科医師が推奨する2分間など、均等に時間をかけて磨く習慣をサポートしてくれます。

手先の負担軽減
加齢や病気などで手先の器用さや握力が低下した方でも、楽に清掃ができます。

電動歯ブラシのデメリット・リスク

磨きすぎによる「歯肉退縮」のリスク
電動歯ブラシを長時間、あるいは特定の箇所に強く押し当て続けると、歯ぐきが傷つき、歯ぐきが下がる「歯肉退縮（しにくたいしゅく）」を引き起こす可能性があります。
歯肉退縮は知覚過敏や歯周病悪化の原因になります。

知覚過敏の悪化
歯肉退縮により歯の根元（象牙質）が露出した状態で使用すると、象牙質を削ってしまい、知覚過敏の症状を悪化させる可能性があります。

特定の歯周ポケットへのリスク
深い歯周ポケットの内部の歯垢を無理に除去しようとすると、歯ぐきを傷つけ、逆に炎症を広げてしまうリスクがあります。

操作の習得が必要
手磨きと違い、「当てるだけ」の正しい使い方を習得しないと、逆に磨き残しが増えることがあります。

あなたはどっち？電動歯ブラシ「適性診断」解説

電動歯ブラシのメリット・デメリットは、あなたの歯と歯ぐきの状態によって大きく異なります。
特に、歯周病のリスクがある方は、自己判断せず、ご自身の特性を理解することが重要です。

電動歯ブラシが「向いている人」：効率と正確さを求める方へ

電動歯ブラシは、手磨きに比べ、安定した清掃力と機能的なサポートが期待できるため、特に以下のような方に最適です。

手磨きでどうしても磨き残しが多い人
忙しい方や、セルフケアの技術に自信がない方は、手磨きではどうしても磨きムラが生じます。
電動歯ブラシの高速振動は、ブラシが触れる部分のプラークを短時間で均一に除去します。
特に、奥歯の裏側や、磨きにくい部分の効率が向上します。

ブラッシングに力を入れすぎる癖がある人
手磨きで力を入れすぎると、歯の根元が削れたり（くさび状欠損）、歯ぐきが下がったり（歯肉退縮）します。
多くの電動歯ブラシに搭載されている過圧防止センサーは、強すぎる圧力を感知して振動を止めたり、ランプで警告したりするため、歯や歯ぐきへのダメージを最小限に抑えられます。

ブラッシング時間が短い人
歯科医師が推奨するブラッシング時間は2分間ですが、手磨きでは集中力が切れがちです。
電動歯ブラシのタイマー機能は、2分間を自動で計測し、30秒ごとに場所を変えるよう促す機能（カドペーサー機能）もあり、磨きムラを防ぎ、適切な時間を確保する習慣をサポートします。

手先の器用さや握力に不安がある人
加齢や疾患（リウマチなど）により、手先の細かい動きが難しくなった方にとって、電動歯ブラシはブラシを「当てるだけ」で済むため、清掃の労力を大幅に軽減し、質の高いケアを維持できます。

歯周病が軽度で、歯周ポケットが浅い人
歯周ポケットの深さが3mm程度の浅い段階であれば、音波式の優しい振動や水流が、ポケットの入り口付近のプラークを効果的に除去し、炎症の予防・改善に役立ちます。

電動歯ブラシが「向いていない人」：ダメージリスクが高い方へ

電動歯ブラシの持つ強力な清掃力が、デリケートな口腔内の状態に対しては逆に悪影響を及ぼしてしまうリスクがあるため、以下のような方は特に注意が必要です。

知覚過敏の症状が強い人
歯の根元が露出している状態で、電動歯ブラシの高速振動が歯に当たると、その刺激が歯の神経に強く伝わり、しみる痛みが悪化することがあります。
また、回転式の強いブラッシング力で象牙質を削ってしまうリスクもあります。

歯肉退縮がすでに進行している人
歯ぐきが下がって露出した歯根部（セメント質）は、エナメル質よりも非常にやわらかいです。
電動歯ブラシを強く当てると、その部分がさらに削れ、歯ぐきがさらに後退する「楔状欠損の悪化」につながり、知覚過敏が深刻化します。

重度の歯周病で歯周ポケットが深い人
歯周ポケットが4mm以上深く、歯ぐきが強く炎症を起こしている場合、電動歯ブラシの毛先がポケットの底まで届かず、逆に炎症を起こした歯ぐきの表面だけを傷つけ、出血や炎症を悪化させる可能性があります。
まずは手用歯ブラシで優しく炎症を抑えるケアが必要です。

矯正装置や複雑な被せ物を入れている人
矯正装置のブラケット周りや、ブリッジの下など、複雑な構造の隙間に電動歯ブラシのヘッドがうまく当たらず、かえって磨き残しが多くなることがあります。
この場合は、手磨きのワンタフトブラシなどで細かく磨く方が効果的です。

口腔外科治療直後の人
抜歯やインプラント手術、歯周外科治療などの直後は、縫合部分や歯ぐきが非常にデリケートです。
高速な振動や水流が患部に当たると、治癒を妨げたり、縫合糸を傷つけたりするリスクがあるため、手磨きの極細毛ブラシで優しく磨く必要があります。

歯周病を悪化させないための「3つの絶対ルール」

電動歯ブラシを使用する場合でも、特に歯周病のリスクがある方は、以下の3つのルールを必ず守ってください。

ルール1：必ず「優しく当てるだけ」
手磨きのようにゴシゴシと動かしたり、力を入れたりする必要は一切ありません。
電動歯ブラシは、毛先を歯と歯ぐきの境目（歯周ポケットの入り口）に優しく当て、その振動・回転に任せて磨くのが正しい使い方です。
力を入れすぎると、歯ぐきを傷つけ、歯肉退縮や炎症を悪化させます。

ルール2：歯間ブラシ・フロスは絶対に欠かさない
電動歯ブラシの高速振動でも、歯と歯の間や奥歯の裏側など、歯間部のプラークは完全には除去できません。 歯周病の原因菌の多くは歯間に潜んでいます。 電動歯ブラシを使用しているからこそ、手磨き以上に歯間ブラシやデンタルフロスを併用することを徹底してください。

ルール3：「ワンタフトブラシ」を併用する
通常の電動歯ブラシのヘッドが届きにくい、以下の部位には、「ワンタフトブラシ」を併用することをお勧めします。
奥歯の一番奥
歯並びが重なっている部分
孤立した歯や、被せ物の周囲
ワンタフトブラシは、手磨きで丁寧に磨くことで、電動歯ブラシではカバーしきれない隙間まで清掃できます。

歯科医がお勧めする電動歯ブラシの「選び方」

電動歯ブラシを選ぶ際は、以下の点に注目してください。

まずはお気軽にご相談ください

電動歯ブラシは、正しく使えばオーラルケアの強力な味方になります。
しかし、使い方を間違えれば、繊細な歯と歯ぐきにダメージを与えかねません。

私の歯周病はどの段階？
電動歯ブラシを使っても大丈夫？

そう疑問に思われた方は、ぜひ一度、当院にご相談ください。
口腔内の状態を正確に診断し、あなたに最適な歯ブラシの種類、正しい磨き方、そして最適なオーラルケアツールをご提案させていただきます。