歯の多くは、若い時には滅多には抜けませんので、日本においては、若い方で歯のケアに時間とお金を投資する人は、ほとんどいません(海外では20代から、歯の定期健診は散髪のように習慣になっています)。しかし、若い時のケアの怠りが、ある年齢を境に顕著に表れてきます。
歯の喪失は、40代では平均的に「1.5本」ですが、50代では「2.5本」、60代では「3.0本」と加速度的に進み、70代では「5.5本」が抜けてしまいます。結果的に、平均値だけを見ても70代までに、「12.5本」が失われてしまいます。その上、歯周病や虫歯による抜歯などを含めると、はるかに多くの歯が抜けてしまうことになります。
歯を失う最大の原因は「歯周病」です。
歯周病とは、読んで字のごとく、「歯の周りの病」。すなわち、歯を支えている骨(歯槽骨)が失われ、その上にある歯肉(歯茎)も下がり、いつの間にか歯がグラグラし、抜けてしまう病です。つまり、歯自体ではなく、歯の周りの組織の病により、その歯を支えることができなくなり、歯自体が抜けてしまうのです。
これまで、歯周病は単に口の健康を損なうだけのものと言われてきましたが、昨今、メディアでも報じられているように、歯周病が身体中の様々な臓器に悪影響を与え、特に「糖尿病」「肺炎」を誘発・悪化させる他、「妊婦の方」「アルツハイマー型認知症」「心臓病」などにも強くかかわってきていることが、明確に分かってきています。
なにより、歯周病の最大の怖さは、『自覚症状がほとんどない』という点です。虫歯のように、「痛く」なれば歯医者に来る理由にもなりますが、「痛みが無い」がために、歯医者に来る理由が見つからない状況になるのです。
これが、定期的にクリーニングに来る方と、そうでない方の、大きな認識不足の差です。
クリーニングに来る方は、それが当たり前の習慣になっていますが、クリーニングに来ない方は、それまた、当たり前の習慣になっています。知識の有る無しで、両者の常識は全く逆になります。その結果、『気づいたときには既に手遅れ』(抜歯)になる場合がほとんどになります。このような悲しい現実が、とりわけ50歳を過ぎると増えてきます。
定期健診の価値は、今ではなく、5年後、10年後、20年後にはっきりと現れてきます。この知識を知った方はぜひ、今から一緒に歯の健康を維持していきましょう。