
歯の「定期健診」とクリーニングは、潜在的な歯の問題の早期発見と予防のために不可欠な診査です。どんなに一生懸命にブラッシングをしても、取り残しや歯石は生じてしまいます。そのため、メインテナンスをご自宅でできている方であっても、歯科医院での定期健診は不可欠となります。
❏歯の健康と全身の健康に不可欠
定期的な歯科検診の重要性は、いくら強調してもし過ぎることはありません。健康なお口の環境は、全身の健康に大きくつながるためです。お口の環境が悪くなると、お口の中には、「身体へ悪影響を及ぼす菌」が増殖します。この菌が、食事をするときに全身に入り、様々な悪影響をもたらすきっかけになることがわかっています。それらは「動脈硬化」や「認知症」(歯周病菌による)の原因にもなることが判明しています。

このように、長寿社会の現代においては、歯の健康の維持は、「歯」そのものを守ると同時に、全身を守るという意味においては、極めて重要な役割を持ちます。なによりも、何歳になっても「ご自身の歯」で食べることができることは、なにより大きな幸せになります。失って初めて気づく「ありがたいもの」の筆頭、それが歯といえるでしょう。
❏健診で行う検査

・視診:目とモニターで確認します
主に確認することは、「歯の問題」と「歯茎の問題」です。歯と歯がかみ合う面においては、「その溝に虫歯がないか」を確認します。あるいは、過去に行った治療(虫歯治療)からの「再発がないか」を確認します。当院ではかならずカメラを用い、拡大して検査をします。
・触診:触って確認します
虫歯といっても、変色した着色と、本当の虫歯とでは「見ただけではわからない」ことが多いものです。したがって、疑いのある歯に対しては、インスツルメントを用いて「それが虫歯か着色か?」の判断をします。
・歯茎の検査:歯周病の状態を確認します
多くの方が「先生虫歯はありませんか?」とおっしゃいます。しかし、虫歯以上に、あるいは同等に大切な検査が「歯周病」の問題です。歯周病は、日本人の「歯を失う原因」の1位です。2位が虫歯、3位が外傷です。
歯茎の検査は、プローブと呼ばれる特殊なインスツルメントを用い、歯と歯茎の間にどの程度の深さのポケットが形成されているかを確認します。この時に大事なことは「血が出るかどうか」です。必ずしも正確に深さを知る必要はなく、むしろ重要なのは「炎症の有無」を確認することです。当院では痛みの少ないチェックを心がけ、この検査を毎回行います(2ヶ月~3か月に1回程度)。そこで問題がある場合は、必ずその対処法としての「フロスの使い方」「歯ブラシの使い方」をお伝えします。
・X線検査:虫歯、歯周病の状態を確認します
目で確認し、インスツルメントを用いて確認し、虫歯や異常所見の疑いがある場合には「X線検査」を行います。当院のX線はデジタル仕様のため、被ばくが少なく安全です。この検査を用いることで、完全ではないにせよ、目では確認できないことも、概ね把握することができます。ここで「概ね」と書いたように、あくまで検査というのは絶対ではありません。大事なことは、定期的なクリーニングや健診を通じ、少しでも「変わったこと」があれば、その都度チェックをすることです。
・これらの検査の後、歯石の除去、歯の着色の除去など、クリーニングに入ります。
❏定期健診の頻度は?
定期健診の頻度は、その方のお口の状況により変わってきますが、多くの場合「2~3か月」に1回です。患者様によっては「4か月に1回」の方もおりますし、逆に「1か月に1回」という方もおります。大事なことは、定期的に行う事です。それも、スキルのあるトレーニングをうけた術者(歯科医師、歯科衛生士)により行われることが大切です。
❏定期健診をおすすめする理由

特に平均寿命が延びている現代、「1年でも健康な状態を維持する」ことが大切になります。虫歯を治した場合でも、歯を削るということは、その歯の寿命は確実に下がっていきます。つまり、治療=完治でありません。このような視点に立つと、健康なときに健診を通じて悪化させないことが重要となります。
また、歯科治療にかかる費用は安くはありません。その一方、定期健診やクリーニングというのは、保険診療の範囲で対応ができます。したがって、健康な今のうちから、健診を受けることが大切になります。
