このページでは、歯周病についてご説明します。歯周病は「歯の周りの病」ですが、治療せずに放置すると、歯の喪失・支持骨構造の損傷、さらには全体的な健康に影響を与え、心臓病や糖尿病などの状態を引き起こす可能性があります。平均寿命が延びても、歯の寿命は大きく変わりません。健康に保持できるかどうかは、その方次第です。
歯周病を防止する3つの取り組み
1つ目:ご自宅での正しいセルフケアが不可欠。
➜歯ブラシだけでは不十分であり、デンタルフロスによる清掃が重要です。
2つ目:歯周病は、気づいたときにはすでに進行している
➜だからこそ、定期的に歯科医院で検査を受け、必要な処置を受けることが重要です。
3つ目:バランスの取れた食事の維持、タバコの回避も不可欠
➜タバコは歯周病の症状を隠します。身体にも悪く、いますぐやめるべきです。
60歳ですべての歯を失う方もおりますし、80歳ですべての歯を保持している方もおります。「もう私は遅い」などとおっしゃらずに、いますぐ始めることをお勧めします。これから先を考えたとき、今が最も早いからです。
■歯周病は歯の病気? 歯茎の病気?
正しくは「骨が溶ける病気」です。
次のレントゲン写真の「線」は、「歯を支えている骨」のラインを示しています。左のレントゲンと比較し、右のレントゲンでは、そのラインが低くなっていることがわかります。この現象こそが「歯周病が進む」ということです。その間、「痛みはゼロ(虫歯とはそこが違う)」で、「複数の歯で同時に進行」し、「気づいたときには同時に歯が抜ける」という点が、歯周病の怖さです。
日本人の「歯が抜ける理由」の1位は「虫歯」ではなく、『歯周病』です。歯周病の怖さは、虫歯と異なり、「症状がないこと」です。痛みなく進行し、気づいたときには歯が抜けてしまうのです。そこで最も有効な対策が、定期的なクリーニングと検診です。以下の写真にあるように、こびりついた歯石(歯周病の進行の原因)は歯ブラシで落とすことができません。専門器具を用いて、定期的に除去することが大切です。
そして何より、日々の『正しい歯磨き』の習慣こそが、いつまでも自分の歯を残す上で不可欠となります。
■歯周病が歯の寿命に直結する理由
多くの方のイメージに、「歯医者=虫歯を治す所」という認識があります。
これは昔の話であり、現代では「歯医者=歯周病を悪化させない所」なのです。
残念ながら「虫歯」というのは、歯科医院に定期的に通っていても生じることがありますが、
「痛み」を発してくれるため、患者さん自身で気づくことができます。結果として、早期に来院することができれば、小さな治療で悪化の防止をすることができます。
一方の歯周病は、進行しても痛みを感じることはほとんどなく、気づいたときには重症化している場合がほとんどです。何より怖い点は、一度進行した歯周病は、ほとんど回復することが出来ず、尚且つ、同時に複数の歯で進行するということです。
日本人の平均寿命は世界でも有数で、現在も伸び続けています。しかし、歯の寿命自体はそこまで長いものではなく、50代で数本しか残っていない方から、80代で20本以上残っている方まで、その格差は残酷なまでに広がっています。
たしかに、インプラントや自費の診療により、ある程度改善させることはできます。
しかし、高額治療(数百万円~数千万円)になります。
そのため、歯の予防に力を入れ、定期メインテナンスを行うことがなにより大切です。
(歯のクリーニング・検診は、セットで1回約3,000~3,500円です。毎月来た場合でも、年間で40,000円もかかりません。2カ月に1回であれば、年間20,000円前後で対応することができます。
「定期的に来るのは『面倒』だな」と思う方もいると思います。その場合、まずは3か月に1回でも構いません。クリーニングにご来院ください。可能ならば、2カ月に1回がお勧めです。長生きする現代の日本において、丈夫な歯をいつまでも維持すべく一緒に頑張りましょう。
■70代で平均12.5本
歯の多くは、若い時には滅多には抜けませんので、日本においては、若い方で歯のケアに時間とお金を投資する人は、ほとんどいません(海外では、歯の定期健診は散髪のように習慣になっています)。しかし、若い時のケアの怠りが、ある年齢を境に顕著に表れてきます。
歯の喪失は、40代では平均的に「1.5本」ですが、50代では「2.5本」、60代では「3.0本」と加速度的に進み、70代では「5.5本」が抜けてしまいます。結果的に、平均値だけを見ても70代までに、「12.5本」が失われてしまいます。その上、歯周病や虫歯による抜歯などを含めると、はるかに多くの歯が抜けてしまうことになります。
歯を失う最大の原因は「歯周病」です。
歯周病とは、読んで字のごとく、「歯の周りの病」。すなわち、歯を支えている骨(歯槽骨)が失われ、その上にある歯肉(歯茎)も下がり、いつの間にか歯がグラグラし、抜けてしまう病です。つまり、歯自体ではなく、歯の周りの組織の病により、その歯を支えることができなくなり、歯自体が抜けてしまうのです。
これまで、歯周病は単に口の健康を損なうだけのものと言われてきましたが、昨今、メディアでも報じられているように、歯周病が身体中の様々な臓器に悪影響を与え、特に「糖尿病」「肺炎」を誘発・悪化させる他、「妊婦の方」「アルツハイマー型認知症」「心臓病」などにも強くかかわってきていることが、明確に分かってきています。
なにより、歯周病の最大の怖さは、『自覚症状がほとんどない』という点です。虫歯のように、「痛く」なれば歯医者に来る理由にもなりますが、「痛みが無い」がために、歯医者に来る理由が見つからない状況になるのです。
これが、定期的にクリーニングに来る方と、そうでない方の、大きな認識不足の差です。
クリーニングに来る方は、それが当たり前の習慣になっていますが、クリーニングに来ない方は、それまた、当たり前の習慣になっています。知識の有る無しで、両者の常識は全く逆になります。その結果、『気づいたときには既に手遅れ』(抜歯)になる場合がほとんどになります。このような悲しい現実が、とりわけ50歳を過ぎると増えてきます。
定期健診の価値は、今ではなく、5年後、10年後、20年後にはっきりと現れてきます。この知識を知った方はぜひ、今から一緒に歯の健康を維持していきましょう。