雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について

      2025/10/20

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

こんにちは。神保町駅徒歩1分の歯医者、神保町野本歯科医院です。

「雨が降る前になると、頭が痛くなる…」
「天気が崩れると、古傷がうずく…」

このような「天気痛」に悩まされている方は少なくありません。
しかし、中には「雨の日に歯が痛む」という、一見不思議な症状を訴える方がいらっしゃいます。

「もしかして、虫歯が悪化したのかな?」

そう思って歯科医院を受診しても、「虫歯はありませんね」と言われ、首を傾げた経験がある方もいるのではないでしょうか。
実はその歯の痛み、「気圧性歯痛(きあつせいしつう)」と呼ばれる、天気の変化が原因で起こる症状かもしれません。
この記事では、なぜ天気が悪い日に歯が痛むのか、そのメカニズムを詳しく解説し、ご自身でできる対策までお伝えします。

 

なぜ、天気や気圧の変化で歯が痛むのか?

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

私たちの体は、気圧の変化によって大きな影響を受けています。

人間の体は、外からの気圧と体の内側にある気圧が常にバランスを保っています。
しかし、台風や低気圧が接近すると、外の気圧が急激に下がります。
すると、体内の気圧との間に差が生じ、このバランスが崩れてしまうのです。
この気圧の差が、耳の奥にある内耳のセンサーを刺激し、自律神経の乱れを引き起こします。
これにより、頭痛や古傷の痛みなど、様々な体の不調が現れることが知られています。

そして、歯も例外ではありません。
歯には、神経が通っている「歯髄(しずい)」という部分があります。
歯髄は、血管が豊富で、わずかな気圧の変化にも敏感に反応します。
特に、以下のような状態の歯は、気圧の変化による影響をより受けやすくなります。

 

気圧性歯痛が起こるメカニズム

1. 治療済みの歯の場合

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

過去に虫歯治療で詰め物や被せ物をした歯は、気圧性歯痛を感じやすい代表的なパターンです。

治療の際に、歯と詰め物や被せ物の間に、肉眼では見えないほどのわずかな隙間が生じている場合があります。
この隙間に閉じ込められた空気は、気圧が急激に下がると膨張し、逆に上がると収縮します。
この空気の膨張・収縮が歯の内部にある歯髄(神経)を圧迫したり、引っ張ったりすることで、痛みとして感じてしまうのです。

また、歯の神経がすでにない(神経を抜く治療をした)歯でも、歯の根の先にわずかな膿が溜まっている場合、その部分に空気が含まれていることがあります。
この空気が気圧の変化で膨張・収縮し、歯の周りの組織を圧迫して痛みが生じることもあります。

 

2. 歯周病が進行している歯の場合

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

歯周病が進行すると、歯ぐきが下がり、歯の根元が露出してきます。
この歯の根元は、歯の表面を覆う硬いエナメル質がなく、内部の「象牙質(ぞうげしつ)」がむき出しになっています。

象牙質の中には、「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる、歯の神経に向かって無数に走るごく細い管が通っています。
この細管は液体で満たされており、通常はエナメル質で保護されています。
しかし、歯周病で象牙質が露出すると、外部の気圧の変化が、この象牙細管の中の液体に直接影響を及ぼします。
低気圧が接近して外からの圧力が低くなると、細管の中の液体は圧力が低い方へと移動しようとします。
この液体のわずかな移動が、歯の神経を刺激し、痛みを感じさせてしまうのです。

 

3. 虫歯の初期段階の歯の場合

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

まだ自覚症状がない、ごく初期の虫歯でも、気圧性歯痛が起こることがあります。

初期虫歯は、エナメル質がわずかに溶け始め、内部に微小な空洞ができていることがあります。
この空洞内の空気や液体が、気圧の変化によって膨張・収縮し、歯の神経を刺激して痛みを感じることがあります。
また、初期虫歯で歯の表面がデリケートになっているため、わずかな気圧の変化でも過敏に反応し、痛みを感じてしまうと考えられています。
つまり、歯に何らかの「弱点」がある場合、気圧の変化が引き金となって、潜在的な痛みが表面化するのです。

 

気圧性歯痛を引き起こす気圧の変化の目安

「どのくらいの気圧の変化で歯が痛むの?」

そう疑問に思われる方も多いかと思います。
気圧性歯痛は、目に見えない気圧の変化が引き起こすだけに、その目安を知りたいという方は多くいらっしゃいます。

結論からお伝えすると、痛みを感じる気圧の変化には個人差が非常に大きいです。
ごくわずかな変化でも影響を受ける方もいれば、大きな気圧の変化で初めて症状が出る方もいます。

気圧の単位には「hPa(ヘクトパスカル)」が使われており、地上の平均気圧は約1,013hPaとされています。
しかし、主に下記のような状態の時には気圧の変化が生じるため、痛みが生じやすくなります。

 

日常的な気象の変化

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

痛みを感じ始める目安:1日で-6hPa〜-10hPa程度の急激な気圧低下

これは、気象予報で「低気圧が接近します」と報じられるような状況です。
台風や発達した低気圧が接近する際は、1日で20hPa〜30hPa以上も気圧が低下することがあり、多くの方が頭痛や歯痛などの不調を訴えやすくなります。

 

飛行機に乗っている時

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

機内の気圧:約800hPa(地上より約200hPa低い)

飛行機が高度1万メートルに達すると、機内の気圧は地上よりも低い約0.8気圧(約800hPa)に保たれます。
これは、富士山の五合目(標高2,300m)にいるのとほぼ同じ気圧です。
短時間でこれほどの気圧が急激に変化するため、気圧性歯痛が最も起こりやすい状況と言えます。

 

登山をしている時

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

気圧の変化:標高100m上がるごとに約-10hPa

標高が高くなるにつれて気圧は下がります。
例えば、標高2,500mの山頂にいるときの気圧は、地上より約250hPa低いことになります。
この気圧の変化も、歯に潜在的な痛みがある方には影響を及ぼしやすいです。

 

スキューバダイビングをしている時

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

気圧の変化:水深10m潜るごとに+1000hPa(1気圧)

ダイビングでは、水圧によって体にかかる圧力が急激に高まります。
水深が10m深くなるごとに、およそ1気圧(1,000hPa)ずつ圧力が上昇します。
この急激な変化は、歯の内部の空洞を強く圧迫するため、「スクイーズ(squeeze)」と呼ばれる激しい痛みを引き起こすことがあります。

 

高層エレベーターに乗っているとき

神保町野本歯科医院で、「雨の日に歯が痛む。天気痛は歯にもくる?「気圧性歯痛」について解説

気圧の変化:50階建てのビルでおおよそ約20hPa程度

意外かもしれませんが、高層ビルにある高速エレベーターでも、わずかな気圧の変化が生じます。
特に耳抜きが苦手な方は、歯に違和感や痛みを感じることがあります。
高層ビルでの気圧の変化は、以下の計算に基づいています。

標高と気圧の関係
標高が10m上がるごとに、気圧は約1hPaずつ低下するのが一般的な目安です。

高層ビルの高さ
1階あたりの高さを4mとすると、50階建てのビルは地上から約200mの高さになります。

高層エレベーターでの気圧性歯痛は、この「約20hPa」という気圧の変化が短時間で一気に起こることに原因があります。
人間の体は、緩やかな気圧の変化には順応しやすいですが、数十秒から1分程度の間に急激な変化が起こると、体内の気圧と外の気圧のバランスを保ちにくくなります。
そのため、ごくわずかな歯の「弱点」でも、痛みの症状が表面化してしまうことがあるのです。

 

痛みは「変化の量」と「変化の速さ」で決まる

気圧性歯痛は、単純に気圧が低いから痛むわけではありません。
「気圧がどれだけ急激に変化したか」が最も重要な要因です。

ゆっくりと気圧が変化するよりも、台風のように短時間で急激に気圧が変化する方が、体は気圧のバランスを保ちにくく、痛みを感じやすくなります。
もし、ご自身の歯が気圧の変化に敏感だと感じるなら、それは歯の内部に何らかの「弱点」があるサインかもしれません。

 

痛みを感じやすい人の特徴

気圧性歯痛は、誰にでも起こるわけではありません。
以下のような特徴を持つ人は、特に痛みを感じやすい傾向があります。

過去に虫歯治療を受けた歯が多い人
詰め物や被せ物の下にわずかな隙間ができている可能性があります。


知覚過敏がある人
歯の根元が露出しているため、気圧の変化による刺激が神経に伝わりやすいです。

歯周病を患っている人
歯周病によって歯ぐきが下がり、歯の根元の象牙質が露出しているため、外部からの刺激に敏感になります。

歯にヒビ(クラック)がある人
歯ぎしりや食いしばりなどで歯にヒビが入っている場合、ヒビの内部に空気が入り込み、気圧の変化で痛みを感じることがあります。

飛行機に乗ることが多い人
パイロットや客室乗務員など、日常的に気圧の変化にさらされている方は、気圧性歯痛が慢性化しやすいです。

 

気圧性歯痛の対策と予防法

「じゃあ、この痛みはどうすればいいの?」

気圧性歯痛は、根本的な原因である歯の「弱点」を解決しない限り、痛みを繰り返す可能性があります。

 

まずは歯科医院を受診する
これが最も重要です。気圧性歯痛の痛みは、虫歯の痛みと非常に似ています。
痛みの原因が本当に気圧によるものなのか、それとも虫歯や歯周病なのかを正確に診断してもらうことが不可欠です。
もし、虫歯や歯周病が見つかった場合は、適切な治療を行うことで、気圧の変化による痛みも解消されます。

虫歯治療後の詰め物・被せ物の再治療
過去に治療した歯の詰め物や被せ物の下に隙間ができている場合は、再治療が必要です。
隙間を埋めることで、痛みの原因となる空気の侵入を防ぎます。

噛み合わせの調整
歯ぎしりや食いしばりなどで、特定の歯に過剰な力がかかっていると、歯にヒビが入りやすくなります。
噛み合わせを調整したり、マウスピースを作成したりすることで、歯への負担を軽減し、歯の弱点を作らないようにします。

痛みを和らげるための応急処置
歯科医院に行くまでの間に痛みを感じた場合は、以下の方法を試してみてください。

痛み止めを飲む
市販の鎮痛剤でも効果がある場合があります。

患部を冷やす
冷たいタオルなどで頬を冷やすことで、炎症を抑え、痛みを和らげることができます。

耳抜きをする
飛行機や高層エレベーターでは、こまめに耳抜きを行うことで、内外の気圧のバランスを保ち、痛みを軽減できることがあります。

 

安心してご相談ください

神保町駅徒歩1分の歯医者、神保町野本歯科医院

「こんなことで歯医者に行っていいのかな?」

そう思われるかもしれませんが、ご安心ください。気圧性歯痛は、決して珍しい症状ではありません。

当院では、患者さんの訴えを丁寧に聞き、お口の中の状態を詳細に診察することで、痛みの原因がどこにあるのかを正確に診断します。
虫歯がないのに歯が痛むという症状は、ご自身の歯の健康状態を知る貴重なサインです。
このサインを無視せず、早めに対処することで、将来の大きなトラブルを防ぐことができます。

もし、雨の日や飛行機に乗るたびに歯が痛むという症状でお悩みでしたら、お一人で悩まずに、ぜひ一度、当院にご相談ください。

 



神保町野本歯科医院:https://nomodent5454.com/

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-19-1 リーガルタワー神保町1F
電話:03-5276-5454

電車でお越しの方:
都営地下鉄 神保町駅 徒歩1分

PAGE TOP