抜歯後の痛みが消えない方へ。それ『ドライソケット』かも?原因と対処法を解説
2025/08/23
「親知らずを抜歯したけど、数日経ってから、ものすごく痛くなった…」
「処方された痛み止めも効かないほどの激痛で、夜も眠れない…」
「もしかして、傷口が腐ってしまったのでは…?」
もしあなたが今、このような状況にあるとしたら、それは『ドライソケット(抜歯後性疼痛)』という状態かもしれません。
ドライソケットは、抜歯後に起こりうる合併症の一つで、通常の抜歯後の痛みとは比較にならないほどの強い痛みを伴います。
この記事では、ドライソケットとは具体的にどのような状態なのか、なぜ起こるのか、そして万が一なってしまった場合の対処法まで詳しく解説します。
ドライソケットとは?抜歯後の痛みの種類を正しく知ろう
抜歯後の痛みには、大きく分けて2つの種類があります。
通常の抜歯後疼痛
抜歯した直後から数時間〜1日程度続く痛みです。
これは、外科的な処置によって歯茎や骨が傷ついたことによる、一時的な炎症反応です。
処方された痛み止めを服用すれば、数日で痛みが和らいでいきます。
ドライソケット
抜歯後、通常は痛みが治まってくるはずの2~4日後から、突然、非常に強い痛みが現れるのが特徴です。
この痛みは、通常の痛み止めがほとんど効かないことが多く、何もしなくてもズキズキと脈打つような激しい痛みが、数日から1週間以上続くことがあります。
ドライソケット(Alveolar Osteitis)とは、抜歯窩(ばっしか:抜歯した後の穴)に、出血によって形成されるはずの『血餅(けっぺい)』が何らかの原因で脱落したり、十分に形成されなかったりして、骨がむき出しになってしまう状態を指します。
血餅は、抜歯後の傷口を保護し、骨や歯茎の再生を促す、かさぶたのような役割を果たします。
この血餅が失われると、外気に触れたり、食物が触れたりするたびに、むき出しになった骨が直接刺激され、激しい痛みを引き起こすのです。
なぜドライソケットは起こる?その原因を解説
ドライソケットは、決して珍しい合併症ではありません。
抜歯の種類や、患者さまの行動、体質など、様々な要因が複合的に絡み合って発生します。
【原因1】患者さま自身の行動によるもの
これは、ドライソケットの最も一般的な原因です。
抜歯後の不適切な行動が、血餅の脱落を招いてしまいます。
強いうがいのしすぎ
抜歯後、口の中に残った血が気になって、強くブクブクうがいをしてしまう方がいらっしゃいます。
この強い水圧が、固まりかけている血餅を洗い流してしまい、ドライソケットを引き起こす最大の原因となります。
抜歯窩を舌や指で触る
抜歯後の穴が気になって、つい舌で触ってしまったり、指で触ったりする癖がある方もいらっしゃいます。
これも、血餅を剥がしてしまう原因となります。
喫煙
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があります。
これにより、傷口への血流が悪化し、血餅が十分に形成されにくくなります。
さらに、タバコを吸う際の吸引圧が、血餅を剥がす原因にもなります。
喫煙者は、非喫煙者に比べてドライソケットになるリスクが約4倍も高まるという報告もあるほどです。
飲酒
アルコールは血行を促進するため、抜歯後の出血が止まりにくくなります。
また、アルコールの分解過程で炎症反応が強くなることも、血餅の形成を妨げる原因となります。
【原因2】抜歯の状況や部位によるもの
抜歯の処置自体も、ドライソケットのリスクに影響します。
難易度の高い抜歯
親知らずの抜歯など、骨を削る必要があったり、抜歯に時間がかかったりするケースでは、抜歯窩が大きくなり、ドライソケットになるリスクが高まります。
また、抜歯時の外科的な侵襲(しんしゅう)が大きいため、術後の炎症が強くなりやすいことも要因です。
下顎の奥歯(特に親知らず)の抜歯
下顎の骨は血流が乏しいため、血餅が形成されにくく、ドライソケットのリスクが高い部位です。
特に、下顎の親知らずは、抜歯の難易度も高いため、ドライソケットが起こりやすいとされています。
過去にドライソケットになった経験がある
一度ドライソケットになった経験がある方は、抜歯窩の治癒機転が弱い可能性があり、再びドライソケットになるリスクが高まります。
【原因3】患者さまの全身状態や体質によるもの
骨粗しょう症の薬を服用している場合
骨粗しょう症の治療薬(ビスホスホネート製剤など)を服用している方は、抜歯後の骨の治癒が遅れるため、ドライソケットになるリスクが高まります。
ホルモン剤を服用している場合
ピルなどの経口避妊薬を服用している女性は、ドライソケットになるリスクが高いという報告があります。
これは、女性ホルモンの影響で血餅の安定性が損なわれるためと考えられています。
免疫力の低下
糖尿病などの基礎疾患がある方や、免疫力が低下している方は、傷の治りが遅く、感染しやすい状態にあるため、ドライソケットのリスクが高まります。
もしドライソケットになったら?その兆候と治療法
「抜歯したけど、痛みが強くなってきて…もしかして?」
と不安に感じたら、まずは冷静に、以下の兆候に当てはまらないか確認してみてください。
下記の兆候が見られたら、ドライソケットである可能性が非常に高いです。
決して我慢したり、自己判断で処置をしたりせず、すぐに抜歯した歯科医院に連絡してください。
ドライソケットの兆候
抜歯後2~4日後に、突然激痛が始まる
抜歯直後の一時的な痛みではなく、一度和らいだ後に再び始まる強い痛みです。
痛み止めがほとんど効かない
市販の鎮痛剤や、処方された痛み止めを飲んでも、痛みが改善しない。
抜歯窩を見ると骨が見える
抜歯窩に白っぽい骨がむき出しになっていたり、血餅が完全に失われて穴が空いたような状態に見えたりします。
口臭が強くなる
抜歯窩の治癒が不完全なため、細菌が繁殖しやすく、不快な口臭が発生することがあります。
ドライソケットの治療法
ドライソケットの治療は、抜歯窩を再び保護し、治癒を促すことが目的です。
ドライソケットの治療にはある程度の期間を要しますが、適切な処置を行えばほとんどの場合、痛みを和らげ、最終的には治癒させることができます。
洗浄
抜歯窩に溜まった食物残渣や細菌を丁寧に洗浄します。 洗浄は生理食塩水や消毒液を用いて、専用の器具で優しく行います。
抜歯窩の再掻爬(さいそうは)
麻酔を施し、抜歯窩の内部をもう一度軽く掻き出すことで、出血を促し、新しい血餅を形成させます。 これは、麻酔が効いていれば痛みはほとんどありません。
薬の塗布・充填
抜歯窩に専用の薬を塗ったり、充填したりして、外部からの刺激を防ぎ、痛みを緩和させます。 薬は、鎮痛効果や殺菌効果を持つものが使われます。
抗生物質の処方
感染の疑いがある場合は、抗生物質を処方して、細菌の増殖を抑えます。
定期的な経過観察
抜歯窩の状態を確認するため、数日に一度、歯科医院に来院していただき、洗浄や薬の交換などを行います。
ドライソケットにならないために!抜歯後の正しい過ごし方
ドライソケットは、抜歯後の行動次第で、そのリスクを大幅に下げることができます。
ここでは、抜歯後の注意すべきポイントを詳しく解説します。
抜歯後24時間~48時間が特に重要!

抜歯後24時間~48時間は、血餅が固まり、安定するまでの非常にデリケートな時間帯です。
この期間の過ごし方が、ドライソケットになるかどうかの分かれ道となります。
血餅が固まるまでの間は、安静に過ごし、出血が完全に止まるのを待ちましょう。
うがいは控えめに
抜歯後、血の味が気になっても、強いうがいは絶対にしないでください。
水を口に含んで、自然にこぼすように優しくゆすぐ程度に留めましょう。
禁煙・禁酒
抜歯後、少なくとも数日間はタバコとアルコールを完全に断つことが非常に重要です。
喫煙は血管を収縮させ、血餅の形成を妨げます。飲酒も血行を促進し、出血が止まりにくくなる原因となります。
食事は反対側で、硬いものは避ける
抜歯した側で噛むと、傷口に食物が入り込んだり、刺激を与えたりして、血餅が剥がれる原因となります。
食事は抜歯した側と反対側で行い、熱すぎるもの、硬すぎるもの、刺激の強いものは避け、柔らかいものを摂取しましょう。
激しい運動や入浴は避ける
抜歯後は、激しい運動や長時間の入浴は控えましょう。
血行が良くなると、再び出血したり、血餅が不安定になったりする原因となります。
シャワー程度に留め、安静に過ごすことが大切です。
抜歯窩を触らない
舌や指で、抜歯窩を触らないように意識してください。
出血が気になっても、無理にガーゼなどを詰め込むのは避けましょう。
処方された薬は正しく服用する
処方された抗生物質や痛み止めは、歯科医師の指示通りに服用しましょう。
自己判断で服用を中止しないことが大切です。
神保町野本歯科医院からのメッセージ:抜歯後の安心を、私たちが支えます

抜歯は、歯の健康を取り戻すために必要な処置です。
しかし、その後の痛みや合併症への不安は、患者さまにとって大きなストレスとなります。
私たち神保町野本歯科医院では、抜歯の処置を丁寧に行うことはもちろん、抜歯後のアフターケアにも特に力を入れています。
抜歯前に、ドライソケットのリスクや、抜歯後の正しい過ごし方について、患者さま一人ひとりに合わせた丁寧な説明を徹底しています。
もし、抜歯後に激しい痛みが現れたときは、いつでも当院にご連絡ください。
私たちが責任を持って、痛みの原因を診断し、適切な治療を行います。
どうぞお気軽にご相談ください。
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