今日のお題は「歯周病」!私は野本歯科のナビゲーターの彩音と言います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。このシリーズでは、友達の周太朗君にお話をします。ぜひ、ご活用ください。
まず、歯周病は「歯の病気」ではありません。名前にもあるように、歯の周りの病なの。
周太郎:うん、歯の周りに問題が起こるわけだね。つまり、歯茎の病気ってことかな?
実は、骨の病気なの。
人間の身体は骨が2mm溶けると、歯肉も2mm下に退縮するの。
周太郎: へぇ~。
歯医者に行くと、クリーニングの前に歯茎の検査をするでしょ。少し痛いときもあるわよね。あれは器具で「ポケットの深さ」を測定しているの。
下の絵を見てみると、、、
Aは健康な歯肉だからポケットは2~3mm以内。
Bは歯周病だからポケットは4mm以上。
ほら、AもBも、見た目はあまり変わらないでしょ。
でもね、内部では骨が溶けているの。
周太郎:見た目じゃ分からなくても、気づかないうちに進行しているということか・・・
そう。それが歯周病の怖い所。
つまり、「静かなる病」と言われる所以なの。
*まとめ
歯周病は専門的には「静かなる病」(サイレント病)と言われています。つまり、気づかないうちに骨がどんどん溶けだして、気づいたときには、歯が抜けてしまいます。まさに、おっかない病といえます。
今日のお題は「歯周病の治し方」!
歯周病の治し方の前に、歯周病の症状を説明するわね。
周太郎:歯周病の症状って、歯茎が腫れる、息が臭い、血が出るとかでしょ。
そう。歯周病になると、まず息から血の匂いがするわよね。なぜ血の匂いかって?
歯周病の原因菌は、血を栄養にして生きているからよ。
周太郎:血を栄養?
そうなの。歯周病菌は普段は歯茎の中に隠れているの。そこでゆっくりじっくり歯茎に攻撃を与え続けるの。当然そこには炎症が起きてるから、血がでるわね。その血を栄養にしてますます元気になる。
彼らは静かにコツコツ、炎症を与え続け、結果的にどんどん歯を支える骨が溶けてしまうの。
周太郎:それは前回学んだことだよね。でもさ、ポケットの中にある歯周病菌を、どうやって取り除くの?
良い質問ね。もちろん歯ブラシでもある程度取り除くことができるの。でもね、歯茎の中で、歯周病菌が歯石を作ったら、それは大変。どう足掻いても歯ブラシでは取れないの。
周太郎:え、、、歯石はあるとまずいの? というか、歯石ってそもそも何? 歯石はどうすれば取れるの?
良い質問をありがとう。ご飯を食べると、口の中にいる「虫歯菌」「歯周病菌」が、その食べ残しを餌にするの。歯周病菌は主として歯茎の中(ポケット内)にある餌を食べて、ある種の「巣」を歯面につくってしまうの。それが「歯垢」(プラーク)と呼ばれるもので、それは48時間以内に固まるわ。この固まったものが「歯石」と言うの。つまり、歯石の正体は、歯周病菌の巣なの。そこには多数の歯周病菌が生息し、ゆっくり、じっくり、コツコツと、歯茎に悪影響を与えるの.
周太郎:ってことは、ポケットの中に歯周病菌の住処ができあがるってこと?
その通り! それは決して歯ブラシではとれないから、歯医者で専門器具を使って取ってもらうの。
周太郎:あまり考えたくないけど、それがしは1年くらいクリーニングに行ってない。ということは、ワシのポケットの中には、歯周病菌の巣ができている可能性があるってこと?
間違いなくできているわ。それらは毎日毎日、ゆっくり・じっくり・コツコツと、あなたの歯の生命力を奪っているの。つまり、歯を支えている骨を溶かしてしまう原因になっているの(前回参照)。
周太郎:でもそれだとさ、歯ブラシも、クリーニングも、永遠にその習慣が必要になるんじゃないの?
そう。歯のケア、そして、歯の周りのケアは一生死ぬまで続ける必要があるの。
周太郎:えぇぇぇぇぇ、、、一生?? ~
今日のお題は「クリーニングについて」!
今日も周太郎さん、よろしくね。
周太郎:こちらこそ。
前回質問で終わっていたわよね。
周太郎:うん。「歯のクリーニングは一生続けないとだめなの?」っていうことなんだけど・・・。
その通り。知識を持つ者と持たない者の『残酷な健康格差』が、これから先は起ってしまうと思うの。
歯の健康もその1つでね、既に日本は大分出遅れているの。多くの国では、歯の健康管理への意識は驚くほど高い。毎日の丁寧な歯ブラシ、フロスはもちろんのこと、クリーニングに行くことは、もはや習慣になっているの(日本もここ数年で増加中)。
彩音先生:実は、日本人は50代までは、世界でも大分、歯の残存数が多い国なの。でもその理由の多くが、先天的な強みの部分が大きいの。実際に歯のケアをしっかりしている人は少ないから、それが60代から、顕著に表れてくるの。
下の資料を見ても、70歳以降、突然、歯がぼろぼろ抜け出してしまうのがわかるはず。つまり、40代、50代の若い時のケアが70代以降に影響してくるの。
周太郎:ん~。このグラフは残酷だねぇ。80歳まで生きていても、歯が無くなったら辛いなぁ。
ワシは今48歳。歯の残存数は25本。このままいけば80歳で20本以下になる可能性があるなぁ。
ごめんなさいね。おそらく、このまま何も変えずに進んだ場合、80歳では10本前後になると思うの。
周太郎:どういうこと❔
つまりね、40代までは何もしなくても、ほとんどの人は、歯が丈夫なの。だからある意味錯覚を起こすの。
「これまで通りでいい。だって歯が残ってるじゃん」って。
でもそれは、あくまでも先天的な強みだっただけなの。ある一定の年齢を超えると、そこから先は、個人差が残酷なほどに出てしまうのよ。だから、48歳の周太郎さんも、今からさっそく歯のケアを本気で考えてほしいの。そうでないと、70歳以降にきっと後悔すると思うの。世界的な建築家の安藤忠雄氏が「人生は必ず余る」と言っているように、人生100年時代は、想像以上に長いものだから。
周太郎: まあ、たしかにそうかもしれないな。ところで、ワシは48歳なんだけど、遅くないかい?
遅いなんて。周太郎さんにとって、今が人生で一番早い時期よ。それは70歳の方も同じ。90歳になれば、「まだあの時は70歳だった」と必ず思う。誰にとっても今がもっとも早いの。
周太郎:う、うん。ただ疑問があってね。なぜ、歯が同時期にポロポロ抜けてしまうの?
普通、歯って1本ずつ抜けるじゃない。同時期ってどういうことなの?
良い質問をありがとう。そうよね。虫歯の場合だと、確かに歯は1本ずつ抜けるわね。でもね、歯周病はほとんどが同時に進行するの。だから同時期に一気(同じ年)に3本、4本と抜けていくの。
それが歯周病の怖い点です。次回は、お口のケアは健康寿命を著しく上げる具体例をお話します。
その分岐点が、『食を楽しむ力をいかに維持できるか』です。
平均寿命が延びている今の時代、長生きができても、歯が元気な人と元気でない人とでは、QOL(人生の質)に大きな影響がでてしまうものです。国が「国民皆歯科検診の検討」を始めたのは、いわゆる「健康寿命」の延伸には、歯のケアが何より大切だと国も知っているからなのです。病気になる人が少なくなれば、国民医療費も減少するため、財政的にも非常に建設的なのです。
■歯周病対策が、なぜ健康寿命に影響を与えるの?
以前老人ホームにお手伝いに行ったことがあります。そこで見た光景はおばあちゃん、おじいちゃんたちの元気な笑顔でした。その笑顔の時間は、いつも決まって「食事の時間」でした。美味しい食事を食べる喜び、その時に友人と会話をする喜び、口を開けて笑える喜び、どれもこれも、歯の健康があってこそだと再認識できました。
実際、お口に元気がある人は、何歳になっても、姿勢がよく、積極的になりやすいものです。逆に、お口に元気がない人は、いつの間にか姿勢が消極的になりやすいのです。
そして、お口の健康は、あらゆる疾患の予防にも大きく寄与します。例として、「糖尿病」「アルツハイマー型認知症」「心臓病」「脳梗塞」「肺炎」などは、お口のケアがしっかりできている人は、そもそもなりにくいことが分かっています。仮になってしまっても、治療後の予後が非常に良い点も、大きな特徴です。
■「誤嚥」をしたとき、歯周病の人は危険
誤嚥(気管に食事が入る)すると、肺にはお口の中の細菌も一緒に入るので、普段からお口のケアがしっかりできている人は、肺に炎症が起こりづらいのです。逆に口のケアができていない人は、1度の誤嚥でも命に関わる事態に発展してしまいます。被災地では「疲労による免疫力の低下」も避けられないため、誤嚥は本当に命取りになるのです。それは入院時も同じです。
*まとめ
歯周病は局所の問題ではなく、全身にも影響を与えます。そして、お口の健康は幸せの源です。「旅やコミュニケーション」も、最終的には「食事をする」こととセットになっている場合が