以前、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」にご出演された日吉開業の「熊谷先生」の番組の中で、「すぐに治療をするのではなく、歯茎の状態が安定してから」という点がございました。患者様からすれば不思議なことだと思います。
しかし、歯の治療というのは、いわゆる「完治」ではありません。歯の治療をしたからといって、虫歯が完全に消えたわけでも、再発リスクがなくなるわけでもありません。あくまでも、元々の状態からみれば、健康な状態ではなくなっているのが実際です。
つまり、健全な歯を削除し、そこに人工的な詰め物をしている関係上、もともとの歯の状態からみれば、「そこには異物がある」という状態になっています。
治療した後は、いかに患者様の「日々のケア」「定期的なクリーニングと健診」を続けるかがカギになっていきます。
そこで最も大事な点は、
『治療前の段階で、再発しにくい環境を作ってしまう』
この考え方です。
いわば、すぐに建物を建てるのではなく、その土台を時間をかけて作っていくということです。いきなり建てる場合と、土台の上に建てる場合とでは、地震が起きたときの結果が大きく異なります。
同様に、お口の環境をまずはセッティングし、その上で治療をしたほうが、はるかに再発率が下がり、長期間の安定が期待できるのです。歯医者には2パターンございます。1つは、「患者様の要望に応え、すぐに治療をする」というパターン、もう1つは「患者様の要望を聞きつつ、正しい対応をする」というパターン。私たちは後者です。「すぐに治療」は致しません。
患者様に丁寧に説明をし、「まずは環境をセッティングをする」という点を重視します。そして、「長きにわたり健康を保つ」ことを重視します。せっかくのご縁ですので、長くお付き合いいただきたい。だからこそ、正しい対応を心がけています。