おならが多いのは歯が原因?「呑気症(空気嚥下症)」について
2026/02/04

神保町野本歯科医院の院長、野本です。
「おならと歯に何の関係があるのか?」
驚かれる方も多いでしょう。しかし、お口は消化管の「入り口」です。入り口の機能が乱れれば、出口である腸に影響が出るのは、実は非常にロジカルな話なのです。
実は、歯科の世界では「おならの悩みと歯の関係」は非常に有名な話です。
その正体は「呑気症(どんきしょう)」。
無意識に空気を大量に飲み込んでしまうことで、消化管にガスが溜まる疾患です。
おならの成分の約70%は、食事中や無意識のうちに口から吸い込んだ「空気」だと言われています。
呑気症の方は、この空気を飲み込む量が異常に多いため、お腹が張り、結果としておならやゲップが増えてしまうのです。
この記事では、なぜ歯や噛み合わせがおならの原因になるのか、そのメカニズムから具体的な歯科的要因まで解説します。
呑気症を引き起こす「歯と口」の7つの原因
歯科医学的な視点から、呑気症(空気嚥下症)を誘発するお口のトラブルを列挙します。
TCH(歯の接触癖):最大の原因

現代人に最も多い原因がこの TCH (Tooth Contact Habit) です。
通常、人間の上下の歯が接触している時間は、食事中を含めても1日わずか20分程度です。
しかし、ストレスや集中時に無意識に上下の歯を触れ合わせる癖がある人がいます。
歯が接触すると、お口周りの筋肉が緊張し、唾液が出やすくなります。
その唾液を飲み込む際、一緒に少量の空気も「ゴクン」と飲み込んでしまうのです。
これを1日に何百回と繰り返すことで、胃腸が空気でパンパンになります。
噛み合わせの不調(不正咬合)

上下の歯が正しく噛み合っていないと、飲み込む動作(嚥下)がスムーズに行えません。
噛み合わせが不安定だと、舌の位置が定まらず、飲み込む際に隙間から空気を巻き込みやすくなります。
特に「開咬(オープンバイト)」など、前歯が閉じない状態の方はリスクが高まります。
歯の欠損(抜けたままの放置)

奥歯が抜けたままになっていると、食べ物を十分に細かく噛み砕くことができません。
塊のまま飲み込もうとすると、喉を通すためにより多くの唾液と空気が必要になります。
また、歯の隙間から空気が漏れ、それを補うために余計に空気を吸い込む動作が発生します。
合わない入れ歯や被せ物

入れ歯がガタついていたり、被せ物の高さが不適切だったりすると、お口の中に違和感が生じます。
違和感を解消しようとして、無意識に舌を動かしたり、唾液を飲み込む回数が増えたりします。
これが「空気を飲むスイッチ」を押し続けてしまいます。
口呼吸の習慣
鼻ではなく口で呼吸をしていると、常にお口の中に空気が流れ込みます。
喉が乾燥しやすくなるため、それを潤そうとして頻繁に唾液を飲み込み、その都度空気を胃に送り込んでしまいます。
早食い・丸呑みの習慣

歯が悪くてよく噛めない、あるいは習慣的に早食いである場合。
食べ物と一緒に大量の空気をかき込むようにして胃に送ってしまいます。
これは物理的に空気を「食べている」状態です。
ドライマウス(口腔乾燥症)
唾液の分泌が少ない状態。
お口の中のネバつきや乾燥による不快感を解消しようとして、空嚥下(空飲み込み)を繰り返すため、呑気症が悪化します。
呑気症が引き起こす「おなら」以外の全身症状
呑気症はおならだけでなく、全身にさまざまな不調をきたします。
これを 「噛みしめ・呑気症候群」 と呼ぶこともあります。
呑気症(どんきしょう)は、単に「空気を飲み込む」という現象にとどまらず、溜まった空気が体内の至る所を圧迫したり、飲み込む際の筋肉の緊張が波及したりすることで、全身に多彩な不調を引き起こします。
消化器系の症状:お腹の張りだけではない苦しさ

胃腸に溜まった空気は、出口を求めて移動したり、内臓を内側から押し広げたりします。
頻繁なゲップ(あえぎゲップ)
胃に溜まった空気の「上からの出口」です。
特に、食事の直後ではなく、仕事中や集中している時に何度も出るのが特徴です。
腹部膨満感と腹痛
腸の中に空気が停滞すると、お腹が太鼓のようにパンパンに張ります。
これにより腸の動き(蠕動運動)が妨げられ、差し込むような痛み(腹痛)を感じることがあります。
胃もたれ・食欲不振
胃が空気で満たされているため、少し食べただけでお腹がいっぱいだと脳が錯覚したり、胃の不快感から食欲が落ちたりします。
逆流性食道炎のような症状
溜まった空気によって胃の内圧が高まると、胃酸が逆流しやすくなり、胸焼けや喉の違和感を引き起こすことがあります。
口腔・顎顔面系の症状:「歯の接触」が招くトラブル

呑気症の原因の多くは、無意識に歯を合わせる「TCH(歯の接触癖)」です。
これにより、お口周りに物理的なサインが現れます。
顎関節症(あごの痛み・音)
唾液を飲み込むたびに歯を接触させ、周囲の筋肉を使いすぎるため、顎の関節に過度な負担がかかり、痛みや開口障害を引き起こします。
舌の縁のギザギザ(圧痕)
飲み込む際、舌を周囲の歯に強く押し付ける癖がつくため、舌の縁に歯の形がくっきりと残ります。
頬の内側の白い線
常に上下の歯が合わさっているため、頬の内側の粘膜が歯に挟まり続け、白い盛り上がった線(頬粘膜圧痕)ができます。
歯の知覚過敏・摩耗
絶え間ない接触により歯の表面が削れたり、目に見えない微細なヒビが入ったりすることで、冷たいものがしみるようになります。
全身・神経系の症状:筋肉の連鎖が生む不調

お口周りの筋肉は、首や肩、頭の筋肉と連動しています。
緊張性頭痛
歯を接触させる際に使う「側頭筋(頭の横の筋肉)」が常に緊張状態になるため、頭を締め付けられるような重い痛みが慢性化します。
慢性的な肩こり・首の凝り
嚥下(飲み込み)の動作には首周りの筋肉も動員されます。
過剰な飲み込み回数により、首から肩にかけての筋肉(僧帽筋など)がガチガチに固まってしまいます。
めまい・耳鳴り
顎の筋肉の緊張が耳の奥の管(耳管)を圧迫したり、自律神経を乱したりすることで、ふらつきや耳の違和感を感じる方もいます。
なぜ「おなら」以外にもこれほど症状が出るのか?
呑気症の本質は「無意識の緊張」にあります。
人は強いストレスや過度な集中状態にあると、防衛本能として「食いしばり」や「頻繁な飲み込み」を行ってしまいます。
溜まった空気という「物理的な不快」と、常に筋肉を使い続ける「肉体的な疲労」が重なることで、おなら以外にも全身にドミノ倒しのように不調が広がるのです。
【セルフチェック】あなたは「歯が原因の呑気症」?
以下の項目に心当たりはありませんか?
ふと気づくと、上下の歯を接触させている。
舌の側面に、ギザギザした歯型がついている。
頬の内側に、白い線のあと(噛み合わせの線)がある。
朝起きたとき、顎が疲れていたり、歯が浮いた感じがしたりする。
食事の時間が人より極端に早い。
仕事中やパソコン操作中、無意識に食いしばっている。
3つ以上当てはまる場合、あなたのおならや腹部膨満感の原因は「歯(TCH)」にある可能性が非常に高いです。
歯科医院で行う「おなら(呑気症)」の治療

歯科医院では、内科的なアプローチとは異なる角度から呑気症を改善します。
TCH是正指導(リマインダー法)
「歯を離す」という意識付けを行います。
家のあちこちに「歯を離す!」と書いた付箋を貼り、それを見るたびに力を抜いてリラックスするトレーニングですこれだけで呑気症が劇的に改善する方が多くいらっしゃいます。
スプリント(マウスピース)療法
夜間や日中に専用のマウスピースを装着します。
物理的に歯の接触を防ぐだけでなく、筋肉の緊張を和らげ、空嚥下の回数を減らします。
噛み合わせの調整
不適切な被せ物の高さを微調整したり、矯正治療を行ったりすることで、舌が正しい位置(スポット)に収まるようにし、空気を巻き込まない嚥下機能を回復させます。
舌運動トレーニング(MFT)
正しい飲み込み方を再学習するトレーニングです。
「空気を一緒に飲み込まない舌の動かし方」を身につけます。
結論:お腹の張りは「お口のリラックス」で解決する場合もある
「おならが多い」「お腹が張る」という症状に対して、整腸剤を飲んでも解決しない場合、それはお口からの「空気が入りすぎています」というSOSかもしれません。
特にお忙しいビジネスマンや、真面目で集中力の高い方ほど、無意識に歯を接触させるTCHに陥り、呑気症を併発しやすい傾向にあります。
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