被せ物をした歯が臭う!銀歯、レジン、セラミック。材料別の原因と対処法
2026/01/21
神保町野本歯科医院の院長、野本です。
毎日丁寧に歯を磨いているのに、特定の被せ物の周りからだけ嫌なニオイがする。
糸ようじ(フロス)を通すと、なんとも言えない不快な臭いが付着してくる……。
こうした症状がある場合、残念ながら「単なる汚れ」ではない可能性が高いです。
多くの場合、ニオイの正体は、被せ物の隙間で繁殖した細菌が放出する「ガス(揮発性硫黄化合物)」や、歯そのものが溶け出している「腐敗臭」です。
まずは、お使いの「被せ物の種類」によって、なぜニオイが発生しやすいのか、その医学的背景を見ていきましょう。
【材料別】被せ物が臭う具体的な原因
被せ物の材料には、それぞれ「経年劣化」の仕方に特徴があります。
銀歯(金銀パラジウム合金)の場合
保険診療で最も一般的な銀歯は、実は最もニオイが発生しやすい材料と言えます。
セメントの溶け出し(ウォッシュアウト)
銀歯は歯と化学的に結合しているわけではなく、セメントという「糊」で隙間を埋めて固定(合着)しています。
このセメントは、装着から数年経つと唾液によって徐々に溶け出していきます。
隙間が空いたところに細菌が入り込み、中で繁殖することで強烈なニオイを放ちます。
金属の腐食
お口の中は、熱いもの、冷たいもの、酸性の飲み物など、金属にとって非常に過酷な環境です。
長年使用された銀歯は表面が腐食し、金属イオンが溶け出すことで、独特の「鉄臭い」ような、あるいは生臭いようなニオイを発生させることがあります。
精度の限界
銀歯は「鋳造(ちゅうぞう)」という、溶かした金属を型に流し込む製法で作られます。
どうしてもミクロン単位での誤差が生じやすく、そのわずかな段差にプラーク(細菌の塊)が溜まりやすくなります。
レジン(歯科用プラスチック)の場合
保険診療の白い被せ物(CAD/CAM冠など)に使われる材料です。
吸水性(スポンジ現象)
レジンはプラスチックの一種であり、微細な穴が無数に開いています。
長期間お口の中にあると、唾液や食べ物のカス、細菌などをスポンジのように吸い込んでしまいます。
これが材料自体に染み込み、時間が経つことで不快な発酵臭や腐敗臭を放つようになります。
摩耗と傷
レジンはセラミックや金属に比べて柔らかいため、毎日の食事や歯磨きで表面に細かな傷がつきます。
その傷の中に細菌が入り込むと、どれだけ磨いてもニオイの元を落としきることができません。
変色と劣化
水分を吸うことで材料自体が劣化し、茶色く変色すると同時に、ニオイも強くなる傾向があります。
セラミック・ジルコニアの場合
自費診療で使われるこれらの材料は、本来「最も臭いにくい」素材ですが、それでも臭う場合は別の原因が考えられます。
接着の不備
セラミック治療は「接着技術」が命です。
装着時に湿気管理が不十分だったり、接着手順にミスがあったりすると、微細な隙間から細菌が侵入します。
歯ぐきの退縮(露出)
セラミック自体は臭いませんが、加齢や歯周病で歯ぐきが下がると、セラミックと自分の歯の「境目」が露出します。
その境目に汚れが溜まり、ニオイを発生させていることがあります。
土台(コア)の問題
被せ物がセラミックでも、中の土台が金属(メタルコア)である場合、その金属が腐食してニオイの元になっているケースがあります。
材料に関わらず起こる「ニオイ」の共通原因
どの材料を使っていても、以下の状態になればニオイが発生します。
二次カリエス(被せ物の中のむし歯)
これがニオイの最大の原因です。被せ物と歯の隙間から侵入した細菌が、中で再び虫歯を作ります。
被せ物の下で歯が腐っている状態であるため、チーズが腐ったような、あるいは鼻を突くような強いニオイがします。
神経がない歯の場合、痛みを感じないため、ニオイが唯一の警告サインとなります。
歯周ポケットの炎症(歯周病)
被せ物そのものではなく、その「周りの歯ぐき」が臭っているケースです。
被せ物の縁(ふち)に汚れが溜まると、歯ぐきが炎症を起こし、歯周ポケットが深くなります。
そこから出る膿(うみ)や、歯周病菌が放出するガスが強いニオイの原因となります。
セメントの腐敗
被せ物をくっつけていたセメント自体が古くなり、細菌が繁殖して腐敗している状態です。
被せ物を外した瞬間に強烈なニオイがする場合、多くはこのセメントの劣化が原因です。
被せ物のニオイを特定する「5つのセルフチェック法」
被せ物のニオイは、ご自身で正しくチェックすることで、痛みが出る前の「早期発見」につながる非常に重要な指標です。
日常のケアの中で簡単に行える「被せ物のニオイ・セルフチェック法」を、具体的に5つのステップで解説します。
お口全体の臭い(口臭)と、特定の歯からのニオイを切り分けて確認することが、原因を特定する近道です。
1. デンタルフロス(糸ようじ)によるチェック法
これが最も確実で、かつ早期に異常を見つけられる方法です。
まず、ニオイが気にならない「健康そうな歯」にフロスを通し、そのニオイを嗅いで基準にします(通常、無臭か、わずかな食べかすのニオイです)。
次に、気になる被せ物の「隙間」にフロスをゆっくり通します。v
フロスを外したら、すぐにその部分のニオイを嗅いでみてください。
チェックポイント
ドブのようなニオイ、あるいは腐ったチーズのようなニオイがする場合、被せ物の下で二次むし歯が進行しているか、セメントが腐敗している可能性が高いです。
フロスが引っかかったり、ボロボロに毛羽立ったりする場合は、被せ物と歯の間に「段差」や「隙間」ができている物理的なサインです。
2. 歯間ブラシによるチェック法(ブリッジや大きな被せ物向け)
フロスが入りにくい場所や、被せ物が連結している(ブリッジなど)場合に有効です。
被せ物の根元(歯ぐきとの境目)に歯間ブラシを通し、抜いた後のブラシのニオイを嗅ぎます。
チェックポイント
歯間ブラシを嗅いで「ツンとする酸っぱいニオイ」がする場合は、歯周ポケット内に嫌気性菌(ニオイを出す細菌)が大量に繁殖しているサインです。
3. 清潔な指やガーゼで「拭き取り」チェック
フロスがない場合でも簡易的に行えます。
手をきれいに洗い、人差し指(または清潔なガーゼ)で、被せ物と歯ぐきの境目をグッと強めに数回こすります。
その指やガーゼのニオイを嗅ぎます。
チェックポイント
指にニオイが移るようであれば、唾液による自浄作用が追いつかないほど、その場所に細菌の温床ができていることを示しています。
4. 「味」によるチェック
嗅覚だけでなく、味覚でも異常を感じることがあります。
チェックポイント
「苦い味」や「不快な味」がじわっと広がる
被せ物の隙間から、中の腐敗した物質や膿が漏れ出している可能性があります。
「鉄のようなメタリックな味」がする
銀歯が腐食し、金属イオンが過剰に溶け出しているサインです。
5. 視覚によるセルフチェック(鏡とライトを使用)
明るい場所で、合わせ鏡などを使ってじっくり観察してください。
チェックポイント
境目の黒ずみ
被せ物の縁が黒くなっているのは、中の虫歯が透けているか、金属が溶け出している証拠です。
歯ぐきの腫れ
特定の被せ物の周りだけ歯ぐきが赤紫色になっていたり、プクッと浮いている場合は、内部で炎症が起きています。
チェックの結果、ニオイがあったらどうすればいい?
セルフチェックで「あ、臭うかも……」と思われた場合、以下の点に注意してください。
「強く磨きすぎない」こと
ニオイを取ろうとして硬いブラシでゴシゴシ磨くと、露出した歯の根元を傷つけ、さらに汚れが溜まりやすくなる悪循環に陥ります。
「痛みがない=大丈夫」ではない
被せ物をしている歯(特に神経がない歯)は、「無痛のまま崩壊していく」のが一番の恐怖です。
ニオイを感じた時点が、歯を救えるかどうかのデッドラインであることも少なくありません。
歯科医院での解決策と予防
ニオイを根本から解決するには、原因に応じた適切な処置が必要です。
精密検査(ニオイの元を突き止める)
マイクロスコープ診査
肉眼では見えない被せ物の「浮き」や「ヒビ」を確認します。
デンタルレントゲン
被せ物の下の虫歯(二次カリエス)の有無を影で判断します。
被せ物のやり替え
ニオイの原因が材料の劣化や隙間にある場合、古い被せ物を外して治療し直すのが唯一の解決策です。
再びニオイに悩まされないためには、精度が高く、歯と分子レベルで接着する「セラミック(ジルコニア)」へのやり替えが医学的に推奨されます。
歯周治療とメンテナンス
歯ぐきの炎症が原因であれば、専門的なクリーニングで歯周ポケット内の細菌を除去します。
当院の歯周病治療は、歯周病予防の第一人者である伊藤公一先生(元日本歯周病学会 理事長)の監修を受けており、最新の歯科医療知識と科学的根拠(エビデンス)に基づいて構築されています。
結論:ニオイは「体からのSOS」です
「被せ物が臭う」という症状は、決して恥ずかしいことではありません。
それは、大切なお身体が発している「この歯を助けて!」というサインなのです。
銀歯のセメントが溶けているのか、レジンが水分を吸っているのか、あるいは中で虫歯が進行しているのか。
原因を特定し、適切に対処することで、ニオイだけでなく、あなたの歯の寿命を延ばすことができます。
神保町野本歯科医院では、マイクロスコープや最新の診断機器を駆使し、「なぜ臭うのか」を徹底的に追求します。
見た目の美しさはもちろん、「臭わない、清潔で長持ちするお口」を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
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